人も会社も自然に成長してしまうもの
山田:自分が作りたくて作っているんだから、妥協した品質のものは作りたくないですものね。青木:そもそも、根源的な欲求として、自分の美意識の中で最も美しい自分になりたいというのがあると思うんです。自分の美意識に監督させているわけだから、手を抜くという選択肢はありません。手を抜いてしまうとしたら、なにかしらの阻害要因があると思います。採用のミスマッチがあって自分の美意識からすれば恥ずべきことをするように求められているとか、達成不可能としか思えない目標を与えられているとか。
だから、採用にはとても気をつけていますし、ロールが大き過ぎたら、適切なサイズにスモールチェンジします。上司と部下のコミュニケーションの中で、より大きなロールを目指すようにモチベートすることは勧めていませんね。「お前は何をやりたいんだ」みたいなことも言いません。生物の成長と一緒で、同じTシャツを着ていたら小さくなってしまいます。だから「なんか窮屈そうだな」と思ったら、「窮屈じゃないの? 着替える?」と声をかける。そんな感じなので、「やりたい」などという気持ちさえ必要ありません。
会社も生物だから、放っておいたら事業が成長を要求する。阻害要因を取り除ければ、あるところまでは成長する。うちは、すぐにTシャツが小さくなってしまうのを着替えさせていくことしかやっていません。こうしようという意思はないんですよね。「健やかであろう」という意思と、そのための冷蔵庫のマテリアルを充実させてクリエイティブ・フィールドのコンディションを整えるところには強い意思がありますが。
山田:そうして成長していった先に、継承という課題が出てきます。昨年IPOされたことと、継承との関係をお聞かせいただけますか?
青木:僕は今年50歳になりました。常識的に考えれば、あと10年か15年が、最前線でやれるリミットかもしれません。クリエイティブ・フィールドにそれなりに依存している社員やお客さんという存在がいるので、クリエイティブ・フィールドが急になくなることが起きないようにしないといけないと思っていました。