ビジネス

2023.03.27 08:30

新しい経営の流派「真ん中が『幸せ』であれば人も事業も自然に成長する」

クラシコム代表取締役社長 青木耕平(左)と令三社代表取締役 山田裕嗣(右)(写真=若原瑞昌)

実績の裏付けがクリエイティブヒエラルキーを機能させる

山田:ソースが果たす大事な役割の一つは「クリエイティブ・フィールドの境界線を守る」ことです。自分が具現化したいアイデアに含まれるものと、含まれないものを示すこと。サブソースはソースが示す境界線の中の特定領域のソースで、ソースとの間にクリエイティブヒエラルキーという自然な秩序が生まれるとされています。
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クラシコムの社員の方の場合、「北欧、暮らしの道具店」という世界観に共感していればいるほど、サブソースとして、自分の世界観を持って新しいものをつくる方へ踏み出すことが、より怖くなったり、時間がかかったりしないものなのでしょうか。

青木:うちに応募してくるのは、自分のビジョンとクラシコムのビジョンのオーバーラップがある人です。その中から、のびのびやっても全体ソースの境界線内に収まりそうな人を採用していることがまず第一歩としてあります。ほとんどの社員がポテンシャル採用だから、時間がかかることは前提になります。

さらに、仕事をしていくなかで、サブソースや全体ソースから、境界線に関する細かいディレクションが続きます。このとき、指摘する側にエビデンスを示す義務はない。丁寧に説明する義務はありますが、納得できない人を客観的な証拠で納得させることを求めていないんですよ。「サブソースがノーだったら、ノーでしょ」という感じです。
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山田:「この人がいいと言ったから」という論拠が当事者以外の方々にも届き得るのは、肌感でみなさんが持っておられるからですか?

青木:いろんな要素があると思います。しかしまずは、実際に足元がうまくいっていることがあると思います。クリエイティブ・フィールドを成功させているという権威が納得の前提として存在しないとクリエイティブヒエラルキーは機能しないと思います。

山田:何らかの権威性が実証されているということですね。

青木:そうです。僕らの人事制度の特徴的なものに、キャリブレーションシステムがあります。マネージャー以上の人たちが半年に1回ぐらい、バイネームで全員の分を議論して、その人のロールを調整しています。調整される側の人たちが「この人たちが多面的に真剣に議論して決めているんだったらまっとうに決めているはずだよね」という信頼を持っていることが前提にないと、こういうやり方はできません。

山田:ロールは何によって決まるんですか?

青木:実績や成果による評価ではなく、次の半年その人に何を期待するのかによって決めています。もちろん何を期待するかは実績を加味して決めていますが、評価ではなく期待である以上、そもそも主観的なものであり、なぜそれを期待できるのかを立証することが求められる性質のものではありません。

山田:マネージャー以上の方々が、自分の主観を持ちながら、青木さんの作られた世界に主観で共感したものを、主観として下に伝えることが、時間がかかっていながらもやれているのがすごいと感じます。

青木:だから、うちでマネジメントとかリーダーシップで一番許されないことがあるとしたら「会社が言っている」という言い方です。それ言うぐらいだったら「降りて」という感じです。どのサブソースにも数字を持たせず、スケジュールにもコミットさせていません。真摯にやって遅れるならいくらでも遅れていい。そうであれば自然と最善を尽くしたくなるのがサブソースなのではないかなと思います。

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構成・文=ひらばやしふさこ 写真=若原瑞昌

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