UBSはクレディ・スイスの株主にクレディ株22.48株あたりUBS株1株を割り当てる株式交換取引で30億スイスフランを支払うことに最終的に同意した。報じられたところではクレディ・スイスは最初の提示額10億ドル(約1320億円)を低すぎるとしていた。
今回の買収額は17日のクレディ・スイスの時価総額を大きく下回る。UBSによると、買収にかかる費用は1株当たり0.82ドル(約108円)相当で、17日の取引終了時のクレディ・スイスの株価2.01ドル(約265円)の半分以下だ。
UBSの発表によると、統合後の投資資産総額は5兆ドル(約660兆円)を超え、今後4年間で80億ドル(約1兆580億円)のコスト削減を見込んでいる。
スイス政府は、アジア市場の19日朝の取引開始前に合併を決着させるという明白な目標を持ってこの取引の交渉を仲介した。
スイスの中央銀行であるスイス国立銀行は、取引合意の一環としてクレディ・スイスとUBSに最大1080億ドル(約14兆2935億円)の流動性支援枠を設定したと声明で明らかにしている。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、スイス政府は合併前に通常必要とされる6週間の待機期間を免除して取引を加速させる見込みで、当局はUBSに株主の承認を得ることを求めないという。
スイス国立銀行は「UBSによるクレディ・スイスの買収により、この例外的な状況において金融の安定を確保し、スイス経済を保護するための解決策が見出された」と述べた。
クレディ・スイスは16日にスイス国立銀行から540億ドル(約7兆1510億円)を借り入れた。スイス国立銀行はその数時間前に「必要なら」クレディ・スイスに流動性を提供すると表明したが、それでも翌17日に同行の株価は7%近く下落した。
クレディ・スイスの株価はここ数週間急落しており、15日には株価が21%下落し、取引が停止された。同行は14日、2021年と2022年の財務報告プロセスに「重大な欠陥」が見つかったと発表。これを受けて、筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクはクレディ・スイスに追加出資しない意向を示した。
最近、米国のシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクが金利上昇の影響もあって破綻したことで、世界の銀行システムの脆弱性に対する不安が生じ、クレディ・スイスに危険な兆候が現れたことでその懸念が強まっていた。
しかしクレディ・スイスの破綻はSVBやシグネチャーが直接の原因ではなく、2022年会計年度末に80億ドル(約1兆600億円)近い損失を出し、現在の危機の前から問題を抱えていた。また、クレディ・スイスでは近年、同行、そして一部の幹部やアドバイザーによる詐欺の疑いやマネーロンダリング防止の失敗といった不祥事が相次いでいる。
(forbes.com 原文)