ビジネス

2023.03.27

新しい経営の流派「真ん中が『幸せ』であれば人も事業も自然に成長する」

クラシコム代表取締役社長 青木耕平(左)と令三社代表取締役 山田裕嗣(右)(写真=若原瑞昌)

クラシコムのソースは創業者である青木さんで、ビジョンのオーサーシップを分かち合う「サブソース」の最初の一人が共同創業者で妹の佐藤友子さん。社員の8割が元お客さんということは、クラシコムのクリエイティブ・フィールドがグラデーションでお客さんにも広がっているということでしょうか。

青木:そうです。真ん中にクラシコムという会社で働く人がいる、同心円状の生態系なんです。お客さんがクラシコムの一員になろうとしてくれるのは、真ん中が一番幸せそうだからです。真ん中にコミットするほど不幸になっていくのが見えれば、何の求心力もなくなる。真ん中を一番幸せそうにすることが、クリエイティブ・フィールドのパワーを最大化していく上で絶対に欠かせない取り組みだと思います。

山田:クラシコムという会社の運営をしているというよりも、もっと広い生態系の真ん中で何かつくっている側の人ということですね。

青木:奇跡的に成立している生態系みたいなものがあり、私はその生態系の美しさを守る仕事なんです。遠くに目標を持って、そこに向かっているわけではない。ここ8年で売上が10倍ほどに伸びていますが「10倍にしよう」とか、「IPOしよう」などとは全く考えていませんでした。このメンバーといまのお客さんで「いい感じで行きたいよね」「幸せになりたいよね」と思ってやってきました。

山田:その結果として、いまがある。

青木:僕の経営は「ブリコラージュ」スタイルです。家にお客さんが来るとき、この料理を作ると決め、レシピに従って材料を買い集めて作るのが「エンジニアリング」。それに対して、冷蔵庫にあるもので、お客さんが好きそうな、名前のないおいしい皿を作るのが「ブリコラージュ」。だから、重要なのは自分の「料理の能力」と「材料の量と質」。つまり、クリエイティブ・フィールドのパワーを増し、健やかにしていくために、コンディションに注意を払うことと、無目的にバリエーションのあるストックを持つこと。この二つを一所懸命にやっていれば、あらゆることに対応できる。そう考えています。

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構成・文=ひらばやしふさこ 写真=若原瑞昌

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