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2023.03.21

グーグルも認める習慣化アプリ、「みんチャレ」開発者の原点

A10 Lab(エーテンラボ)代表取締役 CEO 長坂 剛

ダイエットや運動、勉強など、時に継続に強い意志を必要とする行動の数々。それをテクノロジーの力で後押しするアプリがある。行動変容を支援する習慣化アプリ「みんチャレ」だ。

匿名のユーザーが「5人」でチームを組み、目標達成に向けて協力し合うこのアプリ。世にアプリは数多く存在するものの、「糖尿病患者の歩数が2倍になった」「禁煙に成功した」などのエビデンスから、「効果が出るアプリ」として評判が広がり、3回にわたり「Google Playベストアプリ」を受賞。現在は100万人以上のユーザーが存在し、近年では個人の利用に加え、企業や自治体が積極的に導入する動きも見られている。

今回はそんな話題のアプリ「みんチャレ」を手がける「A10 Lab(エーテンラボ)」代表取締役の長坂剛に、開発の経緯と狙い、展望を聞いた。ソニー出身でゲーム業界に精通した長坂が、現実世界で叶えたかったこととは━━。

原点は「ゲームの楽しさ」と、脳幹梗塞で家族を失った経験

「みんチャレ」をプロデュースする「A10 Lab」代表の長坂は、東京工科大学メディア学部 在学中に、医療専門番組のディレクターとして活躍した後、ソニーに新卒入社。B to B営業やプレイステーションネットワークのサービス立ち上げに携わり、2015年、ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」から「みんチャレ」をリリース。翌年の2016年、「みんチャレ」を通して習慣化ソリューションを提供する「A10 Lab」を創業した。

━━ 創業の経緯をお聞かせ下さい。

長坂:ソニー時代にプレイステーションの開発を通じて、ゲームの楽しさや目標を達成できた時の「幸福」に着眼していました。私自身もゲームが大好きで(笑)。ゲームをプレイする側と提供する側の両面を経験した結果、改めて「ゲームって人を幸せな気分にさせるんだな」と確信できました。

でも通常、人はゲームでプレイしている時は幸せですが、それが終わったら幸せも終わってしまう。だからプレイ中だけでなく、現実世界でも人を幸せにしたいと思ったことが始まりです。人は自分から積極的に行動することで、より幸せを感じられるようになることが分かっていて、それはゲームの原点でもあるんですね。

ゲームにはゲーミフィケーションという、ゲームの中でどんどんユーザーに積極的に行動させてゲームにはまってもらうという技術があります。それを現実の世界で、ビジネスに応用したらどうなるだろうか?と発想して作ったのが「みんチャレ」です。
「みんチャレ」画面。さまざまな目標を持つチーム(左)があり、メンバーはチャットでチャレンジの写真とデータを送り合い(中央)、チャレンジしたデータを蓄積。グラフで表示もできる(右)

「みんチャレ」画面。さまざまな目標を持つチーム(左)があり、メンバーはチャットでチャレンジの写真とデータを送り合い(中央)、チャレンジしたデータを蓄積。グラフで表示もできる(右)

━━「みんチャレ」はダイエットや運動、禁煙など、生活習慣の改善を目的としたカテゴリーをメインにしていますが、何かきっかけがあったのでしょうか。

長坂:実は他界した父が長年、生活習慣病で高血圧や脂質異常の症状を抱えていまして。

それらが誘因となり、突然、脳幹梗塞で倒れて亡くなりました。父は生前、病院からもらった薬を服用していましたが、家族も本人も大したことはないと思っていて、例えば生活習慣を変える、といった対策はしませんでした。

父が亡くなった後に調べてみたら、日本では入院患者の3人に1人を7大生活習慣病(※1)の患者が占めていることが分かりました。生活習慣病は自覚しにくいので、見て見ぬふりをしている人も多い。しかし、しっかり気をつけていれば、予防できるんですよね。そんな生活習慣病を世の中からなくしたいと思い、「みんチャレ」を開発しました。

※1…がん・脳卒中・糖尿病・心筋梗塞・高血圧性疾患・肝硬変・慢性腎不全のこと
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インタビュー=谷本有香(Forbes JAPAN Web編集長)、大柏真佑実(Forbes JAPAN Web編集部)文=中村麻美

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