ビジネス

2023.03.21 11:00

グーグルも認める習慣化アプリ、「みんチャレ」開発者の原点

A10 Lab(エーテンラボ)代表取締役 CEO 長坂 剛

「デジタル・ピアサポート」で孤独を解消

ヘルスケアから勉強まで、「みんチャレ」内には様々なチームがある。長坂は、「みんチャレ」を多くの人へ普及させるため、日々持ち歩けるデバイス、スマホ用のアプリとして開発した。写真を撮影し、スマホに投稿することは、一日を振り返ることにもなり、認知行動療法にも繋がるという。長坂は、「みんチャレ」を高齢者の介護予防にも有効活用することを考えている。
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━━ 今後、「みんチャレ」は高齢化社会においてどのような役割を果たせるとお考えでしょうか。

長坂:サービスを提供していくなかで感じたのは、ユーザーが「孤独」を感じているということでした。老いによる心身の衰えや病気などについて、他人には積極的に話せないという人も多い。それを悩みとしてひとりで抱えることで、「孤独」が生じてしまう。その部分を補い、ポジティブに行動を促すのが、このアプリの使命だと気づいたのです。

シニアが「みんチャレ」を使うメリットとしては、大きく3つあります。まず、要介護の認定を受ける前に活用することで、フレイル予防や認知症予防になること。そして「みんチャレ」で他人と繋がることで、定年退職したシニア層の社会性がアップし、孤独も解消されること。さらに、「みんチャレ」でスマホデビューをするシニアユーザーの方も多く、デジタルデバイド(情報格差)も解消できることです。

━━ このような領域は「習慣テック」と呼ばれ、今後ますます可能性が広がっていく分野だと思われますが、その中で「みんチャレ」はどのようなカテゴリーになりますか。
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長坂:私達は、「デジタル・ピアサポート」と呼んでいます。「ピアサポート」は、今まで主に医療分野で使われていた言葉でした。例えば、癌患者同士でコミュニケーションをとって情報交換をするといったケースです。しかし私たちはユーザーが要介護や病気になった時だけでなく、予防的な観点でサポートしていきたい。そのためピアサポートをデジタルのスマホアプリで提供することによって、より多くの人が気軽に参加できる形にして、効果を高めていきたいと考えています。

広がる利用。企業に自治体、産前産後ママや漫画家チームも

「ウェルビーイング」への意識の高まりと共に、心身の健康が見直されている昨今。「みんチャレ」の活用範囲も、個人から企業、自治体へと広がりを見せている。

━━ 企業や自治体での活用事例を教えていただけますか。

長坂:今年度は、東京都墨田区や神奈川県綾瀬市など、関東の5つの自治体で導入されましたが、来年度は関西圏を含め11の自治体で採用される予定です。具体的には、健保の保健事業として「みんチャレ」を禁煙活動に取り入れたり、企業の健康診断で生活改善が必要だとされた社員に「みんチャレ」を勧めているという事例もあります。

例えばジョンソン・エンド・ジョンソンさんでは、「みんチャレ」と禁煙補助剤を組み合わせて、社員に禁煙を促すチャレンジもすでに始まっています。さらに、昨年1月からは山梨大学医学部附属病院などと一緒に、糖尿病の重症化予防に関する実証実験を行っています。

━━ 「みんチャレ」のユーザーについて伺います。一度使い始めた方はどの位の期間、続けていらっしゃいますか。また、「みんチャレ」ではユーザー自身が目的に応じてチームを作成できるようになっていますが、開発者として予想していなかった活用法がありましたら、お聞かせいただけますか。
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インタビュー=谷本有香(Forbes JAPAN Web編集長)、大柏真佑実(Forbes JAPAN Web編集部)文=中村麻美

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