ビジネス

2023.03.21

グーグルも認める習慣化アプリ、「みんチャレ」開発者の原点

A10 Lab(エーテンラボ)代表取締役 CEO 長坂 剛

5人チームで励まし合う「ゲーミフィケーション」理論

「みんチャレ」では、新しい習慣を身につけたいユーザーが「5人」でチームを組み、チャットで励まし合いながら、目標達成に向けてチャレンジする。では、他のアプリとの違いはどこにあるのか。

他の習慣化アプリには、記録を主な機能とするものが多く、中にはお金を賭けることでユーザーに強制力を働かせるものもある。一方、「みんチャレ」は仲間同士で支え合う「ピアサポート・テクノロジー」や、人が自発的に行動する手助けをする「ナッジ理論」、さらには「ゲーミフィケーション」の要素を取り入れて、ユーザーが楽しみながら行動変容をできるように促している。

ターゲットは、単独で何かを成し遂げることを重視するタイプや、大きな強制力なしには行動を起こさないタイプではなく、その中間層に設定。例えば「やる気はあるけど続かない」「同じ目標や悩みを抱えている人が身近にいない」という課題を抱えた人たちだという。

━━ 匿名性のある5人をひとつのチームにした点について、とてもユニークだと思いましたが、その理論をお聞かせいただけますか。

長坂:まさに5という数字にこそ意味があります。テストの結果、5人で報告し合うことが一番、習慣化に繋がることが分かりました。ゲーミフィケーションでは、ユーザーが他のユーザーからフィードバック(反応)を受けることで、行動を強化し、繰り返すようになるという原理があります。そしてそのタイミングは、早ければ早いほど効果的だと分かっています。

様々な人数で試したところ、チームが4人以下だと人数が少ないためにフィードバックが遅くなり、6人以上だと人数が多すぎて「社会的手抜き」(※2)という心理的効果が働き、フィードバックが遅れることが分かりました。日本には昔、江戸時代に互助を促す「5人組」制度が存在しました。古代中国でも、5軒単位で人民を組み合わせ、互いに助け合ったり、監視しあったりする隣保制が用いられるなど、歴史的な成功例もあります。

現代社会では、SNSを通して表面上で繋がっているけれど、きらきらした日常しか見せ合わず、他人と自分を比べて落ち込んでしまう人も少なくありません。私は常々、「果たしてSNSは人を幸せにしてくれるのだろうか?」という疑問を感じていました。

ところが「みんチャレ」の5人組は個人情報に紐付けられておらず、匿名なので、気兼ねなくありのままを報告し合える。例えば、人には言いにくい病気の話であったり、ダイエット中なのに「今日はケーキを食べちゃった〜」とか、格好悪い出来事もアップできるのです。この、ありのままの自分を他人に開示する行為が重要です。

さらに、「みんチャレ」にはユーザーが一定期間、何もチャット上でアクションを起こさないと、自動的にチームから退出になる機能も用意しています。だから、5人みんなで励まし合いながら目標に向かって努力を続ける、適度な強制力が働くのです。

※2…集団で共同の課題に取り組む時、1人当たりの生産性が人数の増加に伴って下がる現象

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インタビュー=谷本有香(Forbes JAPAN Web編集長)、大柏真佑実(Forbes JAPAN Web編集部)文=中村麻美

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