また、「ポケモン GOを一緒にやろう」とか、K-POPファンの推し活など、趣味の分野で利用される方もいらっしゃいます。個人的に面白いと思ったのは、プロの漫画家さんが「さぼらず毎日ネームを書こう」といったように、仕事で導入されていたことでした。
他社の5倍。高いエンゲージメントを支える「独学の心理学」
「みんチャレ」最大の特徴は「孤独を感じない楽しい体験」と、高いエンゲージメント率(継続利用)にある。後者は国内トップクラスのヘルスケアアプリの5倍とも言われ、それを支えるのは心理学に基づくサービスデザインだ。━━ フィードバックが早い5人のユーザーでチームを組んだり、敢えて個人情報を紐付けないシステムであったりと、人間の心理をよく踏まえてサービスデザインをされています。心理学をどこかで学ばれたりしたのでしょうか。
長坂:まったくの独学なんですよ。大好きなゲームを攻略していくうちに、どんどん心理学に興味が湧いてきました。作り手とユーザーの気持ちを心理学から見ると、とても面白い。自分では、「心理学研究家」と名乗っています(笑)。
この心理学とか行動経済学という領域は、定説だとされているものでも試してみたら実は全然違っていたということも多い。だから色々なケースや論文を確認して仮説を持ちつつ、サービスに実装したらどうなるかをテストし、調整していくようにしています。それで毎週「みんチャレ」を、バージョンアップしています。
━━ 安全性について、いわゆる「荒らし」と呼ばれる攻撃的な人物が介入してしまった場合の対策などを、お聞かせ願えますか。
長坂:「心理的安全性」こそ、私達が最も大切にしている要素です。「荒らし」が介入してしまった場合、通報システムで即座に排除できます。5人チームにしたのは、万一があった場合、4人しか影響を受けないという理由もあります。
テクノロジーの力で、みんなを幸せにしたい
長坂が「現実世界でも人を幸せにしたい」と願って「みんチャレ」を開発し、社会実装するうちに見えてきたもの。それは、デジタル・ピアサポートというアプローチで現代社会がもたらす「孤独」や「高齢化社会」といった問題の改善に貢献する、独自性の高いビジネスであった。━━ 今後の展望について伺えますか。
長坂:創業の原点である「幸せ」に軸を置くことは、現在も未来も変わることはないでしょう。将来的には、「みんチャレ」をグローバルに提供したいと考えているところです。軸となるコミュニケーションの考え方は、全世界共通で国によって変わりませんが、コンテンツの内容に関しては国や生活環境によって、少し変える必要があるかもしれません。
まずは介護予防だったり、生活習慣病を改善する実績を、企業や自治体を巻き込みながら増やし、社会実装を進めていきたい。そして皆さんが当たり前のように「みんチャレ」を使って、病気やフレイルを予防したり、なりたい自分になれるように積極的に行動する世界が来るといいですね。つまりは、「テクノロジーを使って皆を幸せにしたい!」それが私の願いなのです。
長坂剛(ながさか・ごう)◎1982年静岡県生まれ、神奈川県育ち。2006年東京工科大学メディア学部卒業後、ソニー入社。BtoB営業やプレイステーションネットワークのサービス立ち上げに従事。2015年ソニーの新規事業創出プログラム(SAP)から「みんチャレ」をリリース。2016年にA10 Lab Inc.を創業し、2017年にソニーから独立。