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2023.03.16

AIが作ったコンテンツがソーシャルメディアを破壊する日

Getty Images

米国時間2023年3月3日という日付を覚えていてほしい。

暦の上ではただの金曜日だが、実はこの日は有名なソーシャルメディア企業が自らの終焉を発表した日なのだ。そしてそれは、すべてのソーシャルメディアの終わりの始まりでもある。

そう、米国時間3月3日とはLinkedIn(リンクトイン)が新しい「コラボレーション記事」のコンセプトを発表した日だ。これは(AIのトレンドを追っていて、こうしたことが通常どのように展開するかを知っていれば)最初はほぼ無害なものに思える。これまでは、音声ボットが常に家で使えるとか、ロボットカーが車で職場に連れていってくれるといったものだった。発表の中でリンクトインは、「これらの記事は、編集チームが関わって開発したAIを使って、議論のきっかけを与えます」という差し障りのない表現をしている。

実際には何が起きているのだろうか?私の推測では、リンクトインはAIを使って自分たちのプラットフォーム(彼らが言うところの「のべ100億年のプロフェッショナル経験」)を取り込み、AI自身がコンテンツを生成しようとしているのだ。私たちはこれらの投稿に反応し、議論を促すように仕組まれているため、人間としてこれらの投稿に応答することになる。これらの投稿にどのようなラベルが貼られるかはまだ不明だ。しかし、より多くのエンゲージメントを促すために、AIを活用したコンテンツが数多く登場することは確かだろう。

ある報道は、これを半自動化されたソーシャルメディアと呼んでいる。だが私はつい暗い見方をしてしまう。最近私は、AI チャットボットが Twitter (ツイッター)にどのような投稿を行っているかについて書いたが、そのときコメント投稿者が、アカウントが本物の人間によって動いているかどうかについて混乱することがよくあるという話に触れた。気になる展開だ。

AIが仕事を手伝ってくれるのは大歓迎だ。だが私は、AIによって作られたコンテンツが、人によって作られたものだと思わされることには賛成できない。1つの記事ごとに、全体の体験が劣化してしまうからだ。私は最近、リンクトインのスパムメッセージが増えて、今ではダイレクトメッセージをほとんど読まなくなったほどだ。AIスパムほど不要なものはない。

問題は、これらがどこにつながっていくのか、ということだ。AIがアルゴリズムをコントロールし、私たちをより多くの議論に誘うコンテンツを投稿し始めたら、(AIによって生成された顔を持ち本当は存在しない場所から発信している)まるで人間に見えるアカウントがますますこれらのネットワークに侵入し始めて、私たち全員の経験を台無しにするのは時間の問題だろう。
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翻訳=酒匂寛

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