女性発明者から女性リーダーへ
こうしたアプローチは、技術分野において女性の数が慢性的に低水準にとどまっている問題を解決するための一助となります。STEM分野は女性の参入が少なく(ユネスコによれば世界全体で33%程度)、女性の定着率も低い状況にあります。STEM分野で雇用されている女性は、他の専門職の女性と比較して、自身の専門分野を離れる可能性が著しく高いのです(31.5%対6%)。これは、STEM分野の女性がかなり高い確率で他の分野に転職してしまうことが原因であり、仕事を辞めてしまう女性がSTEM分野で極端に多いからではありません。
また、STEMから他の分野への転職は、就業から最初の数年間に最も多いこともわかっています。
とりわけ技術分野では、特許が昇進に直結します。このため、特許取得は、より長期のキャリア構築やリーダーシップのあるポジションへの昇進に役立つのです。例えば、テキサスA&M大学(Texas A&M University)は2006年、在職期間および昇進の判断に発明を取り入れることを決定し、他の大学でもこれに追随する動きがありました。
特許取得は企業価値の上昇にもつながるため、産業科学における特定の職種では特許取得活動の重要性が増し、キャリアアップの条件になることもあるのです。
先進的な国であっても、女性の収入は男性に比べるとかなり低いのが現状です。多くの技術分野では、特許取得が昇給や金銭的インセンティブにつながります。特許を取得した発明者は、職業や、移民という立場、その他の要因を踏まえても、発明者ではない人に比べ平均収入が一貫して高くなっていることが分かっています。
つまり、特許取得活動に参加している人の方が高い収入を得やすいのです。したがって、特許取得プロセスへの女性の参加を増やすことが、賃金のジェンダー・ギャップ解消につながります。
我々は、女性が必要とする情報や知識を提供することで、特許取得活動に参加する女性発明者の数を増やし、最終的には、次世代の女性たちがSTEM分野にみられるジェンダー・ギャップを解消できるようになればと考えています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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