経済

2023.02.28 08:30

ふるさと納税で分かれる明暗 日本の税制を考える

(Shutterstock)

(Shutterstock)

ふるさと納税は、都市部と地方自治体の税収格差を緩和し、地方再生を図る目的で誕生した国の制度です。

利用者は、寄付をした自治体から寄付金額の最大30%相当の返礼品が贈られることで、この制度は広く普及しました。

しかし、ふるさと納税による都市部の自治体の財源流出は、住民への公共サービスの低下が懸念されるほど深刻な課題となっています。本題について世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。


欧米に多く見られる1月から12月を会計年度とするのに対し、4月を年度初めとする日本独特の「3月締め」の時期を目前に、今年も、確定申告の季節がやってきました。

1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、そこに課せられる所得税額を計算して確定させ、翌年3月中旬までに申告を求められる所得税の確定申告。昨年一年間に行なった「ふるさと納税」の控除申請もここで行うことになります。

ふるさと納税は、人口一極集中による、東京都をはじめとした都市部と地方自治体の税収格差を緩和し、地方再生を図る目的で、2008年に誕生した国の制度。

納税者が、自分の選んだ自治体に寄付をすると、ほぼそれと同額の住民税や所得税が免除される仕組みとなっているこの制度、2021年度には740万余りの国民が利用しました。寄付総額は過去最高額となる8302億円に達し、国の制度として広く定着してきています。

最も大きなメリットは、ほとんどの自治体から、実質的な自己負担額2000円で寄付額の最大30%相当の返礼品と称する魅力的な商品を寄付者が受け取ることができるという点。

利用者にとっては、もともと支払うべき納税総額のうち、決められた上限額までを自分が住む場所以外の自治体に「納税」すると、各地の郷土色豊かなグルメや特産品などをもらえるため、利用しないと損とも言われるほどのサービスに成長したのです。


ふるさと納税で拡大する自治体の事業


2021年に寄付額が最も多かった上位5の自治体のうち、3つを占めたのは北海道の自治体。魚介類や海産物をはじめとする美味しい特産物が豊富なことから、「食材の宝庫」と呼ばれる北海道ですが、全国首位となった紋別市には、約153億円の寄付が集まりました。寄付受け入れ額から控除額や経費を差し引いた分が、自治体の手元に残る実質収支になりますが、同市は76.9億円という、多額の黒字を確保しました。
次ページ > ふるさと納税から子育て支援も

文=Naoko Kutty, Digital Editor, World Economic Forum

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事