この戦略が奏功し、2022年度の寄付額は30億円に達する見込みです。同町は、これを原資に充て、新たに1億円の予算を設け、子育て支援や移住促進、キャッシュレス決済の推進など、などの施策を積極的に展開する方針を示しています。
子育て支援には、紙おむつやミルクなどの育児養親の購入費の助成対象を、満1歳から満3歳までに引き上げた上、年間の助成上限額を現在の3倍の3万6000円に増加。また、小中学校入学時に祝い金5万円を支給するなど、家計の負担軽減の具体策が盛り込まれています。
都市部と地方が抱えるそれぞれの課題
都市部の住民が、地方の自治体に寄付をする傾向が強いふるさと納税。税収が大幅に向上する地方自治体が増える一方で、都市部の自治体は本体ならば得られる税収を失い苦悩しています。
東京23区全体では、2021年度に540億円以上が他自治体に流出しました。最も減収額が大きかったのは、人口と世帯数が東京23区の中で最も多い世田谷区の83億9600万円。これは、区内の小学校の改築2校分以上にあたります。
また、三重県の四日市市は、年収1000万円でふるさと納税のシティープロモーション戦略プロデューサーを公募し、話題を集めています。地方自治体の職員としては厚遇の求人を四日市市が募集した背景には、2012年以降10年連続してふるさと納税で赤字が続き、2021年度にはその額が年間8億円に達した同市の抱える厳しい状況があります。
都市部の自治体が財源流出に苦しむ一方で、その流出金額が地方の自治体にそのまま入るかというとそうではありません。少しでも多く寄付を確保するために、自治体間の返礼品競争が激化しており、ふるさと納税を受け取る自治体は、支払われた金額のおよそ半分を、返礼品やその広告費・事務処理費として使用しているのです。
税収が減少している都市部では住民への公共サービスの低下が懸念され、税収が増大したもののその半分の額を公共サービス以外のものに充てている地方自治体においても、税金の使われ方が問われます。こうした中、ふるさと納税は、税制度のあり方そのものを改めて検証する機会にもなり得るでしょう。
社会課題の解決や人々の暮らしを支えるための行政サービスとのバランスと、持続可能な地域振興の両方の観点から、本来の税の意味に則り、より良い税の使い道を見直す時がきているかもしれません。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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