WOMEN

2023.03.07

東大メタバース工学部が女性の「リスキリング」を手がける理由

経済キャスター瀧口友里奈、東京大学工学部長の染谷隆夫、リクルート執行役員の柏村美生(右から順)

日本のSTEM(科学・技術・工学・数学)分野に占める女性の割合は、2019年のOECD調査で36カ国の加盟国別のなかで最下位。STEM分野での女性活躍を広げていくため、何が必要なのか──。3月8日の国際女性デーに合わせて、考える「& STEM」企画。
 
今回は、2022年秋に開講した東京大学の「メタバース工学部」の取り組みにフォーカス。東大の学生向けではなく、年齢やジェンダー、住む場所を問わず、幅広い人たちを対象にDX人材の育成を目指し、オンラインを中心にAIなど最新の工学や次世代通信などについて学べる講座を展開する。産官学民が連携し、東大工学部がリクルートなど法人会員とともに運営し、社会人の「リスキリング」を支援している。
 
人気なAI講座については、介護や育児などの事情で離職した人や休職または求職中の人たちも対象に門戸を広げている。ライフイベントでキャリアを諦めざるを得ない女性もいるなか、なぜ工学部が女性の「リスキリング」に乗り出したのか。
 
東京大学工学部長の染谷隆夫氏と、メタバース工学部の情報発信の支援を行うリクルート執行役員の柏村美生氏、東大工学部のアドバイザリー・ボードメンバーを務める経済キャスター瀧口友里奈氏の鼎談をお伝えする。
 
& STEM企画 Forbes JAPAN

「東大メタバース工学部」に企業が参画する理由

 
瀧口友里奈(以下、瀧口):まず、東大メタバース工学部についてご紹介していただけますか。
 
染谷隆夫(以下、染谷):メタバース工学部は、工学分野の最先端技術やデータ活用などについて、学ぶ意欲のあるすべての人に開かれた、新しい学びの場です。2022年9月にメタバース上で開講式を行い、10月から社会人向けのリスキリング工学教育プログラムと、中高生を対象としたジュニア工学教育プログラムをスタートしました。

通常、大学では、物理的な空間で講義を行っています。物理空間では、リアルな感動を伝えられるなど良い面がたくさんありますが、教室のキャパシティによって入れる人数が限られていたり、遠方から通いにくいといった制約があります。学ぶ意欲のある人に平等に同じクオリティの教育プログラムを提供したいという思いから、仮想空間の学びの場、メタバース工学部をつくりました。
 
瀧口:メタバース工学部には複数の企業が会員企業として参画しています。リクルートは、メタバース工学部にどういう関わり方をされていますか。

柏村美生(以下、柏村):主にメタバース工学部のWebサイトの構築・運用を通じた情報発信のお手伝いをしています。工学部の学生が卒業後に社会でどのような活躍をしていくのか、その可能性を世の中に伝えるためのコンテンツを検討したり、その運営を支えている学生たちに向けたワークショップを開催するなどのサポートさせていただいています。それからたくさんの従業員もメタバース工学部の講義を受講しています。

瀧口:リクルートの知見を大学に提供しながら、大学からも学んでいるというインタラクティブな関係性なのですね。メタバース工学部を通して産学連携が行われ、さらには企業が大学のD&Iの要にもなっていて、大学と社会の接点を創造している。工学部アドバイザリー・ボードでは、産学連携とD&Iという2つのテーマについて議論していますが、その2つが凝縮されて詰め込まれているのがこのメタバース工学部だということを改めて実感しました。
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聞き手=瀧口友里奈 文=坂本潤子 構成=督あかり 写真=山田大輔

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