WOMEN

2023.03.08

AIの進化で「子育て」が変わる! 4児の母、ヨーキー松岡が描く未来図

「ヨーキー松岡」の愛称で知られる、松岡陽子

日本のSTEM(科学・技術・工学・数学)分野に占める女性の割合は、2019年のOECD調査で36カ国の加盟国別のなかで最下位。STEM分野での女性活躍を広げていくため、何が必要なのか。3月8日の国際女性デーに合わせて、考える「& STEM」企画。
 
ロボット工学と神経科学の研究者からビジネスリーダーに転身し、グーグルやアップルの副社長などを歴任し、日米を拠点に異色のキャリアを持つ女性がいる。
 
「ヨーキー松岡」の愛称で知られる、パナソニックホールディングス(HD)執行役員の松岡陽子 (以下、ヨーキー)だ。4児の母でもある彼女は、自ら望んで仕事も子育ても全力投球してきた。日米テック界を駆け抜けてきたが、その裏では人知れず悩んできたこともあり、試行錯誤の連続だった。
 
この春には、仕事にも子育てにも邁進してきたヨーキー自身の経験とテックの知見を掛け合わせて、パナソニックHD100%出資の子会社のCEOとして、次世代ファミリーコンシェルジュサービス「Yohana」を東京都内でローンチした。22年10月から全米で先行展開しているサービスだが、実は日米の家族が抱える悩みに差はあまりないという。
 
ヨーキーが考える子育ての未来とは──。

実は産休・育休「後進国」のアメリカ

産まれたばかりの子どもを抱えながら、彼女はオフィスに出社。そしてエンジニアのためにボードに絵を描いていた。海外映画に出てきそうな一幕だが、現実にあったヨーキーの話だ。
 
日本の労働基準法では、産前6週間前(双子以上は14週間前)から、また産後8週間までは原則として働くことができない。( * 産後6週間を過ぎたら本人が請求し、医師が認めた場合は就業可能 )
 
正社員や一定条件を満たした有期契約労働者については、子どもが1歳になるまでは、育休を取得することもできる。日本では冒頭のような話はあってはならないように感じるが、フリーランスや経営者の女性は労働基準法の適用外のため、ありえない話ではない。
 
実は、産休・育休制度の整備に遅れをとるアメリカでは、4人に1人が産後2週間以内に、多くの人が産後3カ月程度で仕事に復帰すると言われている。アメリカの日系企業であっても、同様なケースを聞く。
 
まず、そんな環境下で子育てをしながら、先端科学の研究者、そしてテック界のビジネスリーダーとしてサバイブしてきたヨーキーの過去を紐解いていきたい。

具体的なキャリアよりも「ミッション・ドリブン」の生き方

ヨーキーは中学卒業後に渡米し、プロテニスプレイヤーのキャリアを追い始めたが、10代でけがをして断念。そんな経験から「テニスバディ」となるロボットを作りたいと、電気工学とコンピュータサイエンスを学ぶため、カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、MITの修士課程に進学した。

その頃、思い描いていたキャリアは?と聞くと、「何になりたいかよりも、新しい分野を勉強してロボットバディを作りたい、そんな思いに駆り立てられ研究を始めました」という答えが返ってきた。
 
意外なことに、アスリートからSTEM分野に異色の転身をしたが、当時キャリアとしてエンジニアや教授になる道は特に考えていなかったのだ。
 
彼女が大切にしているのは「ミッション・ドリブン」の生き方。進路選択の正解はひとつではない。細かなキャリアを思い描くよりも、あらゆる意思決定と行動について、自身のミッションを軸に取捨選択していくといった考えだ。

その一方で、私生活では大きな夢を持っていた。会社員の父と専業主婦の母のもとで一人っ子として育てられたヨーキーは「大きな家族を作りたい」と幼少期から思っていたのだ。「将来何がしたい?と聞かれたら、子育ては私にとって大きな希望でした」
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文=督あかり 写真=小田駿一

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