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2023.03.08 08:30

AIの進化で「子育て」が変わる! 4児の母、ヨーキー松岡が描く未来図

Google X 創業時は、子育て真っ盛り

彼女の希望通り、1998年にMITで理学博士号を取得してから5年後に結婚し、2005年に双子の娘、2007年に長男、2011年に次男を授かった。ただ、一度もキャリアを諦めることはなく、仕事にも情熱を注いだ。
 
人体と脳のリハビリを促すロボット機器の開発に携わり、ロボット工学と神経科学を融合した研究成果が認められ、2007年にはアメリカで「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞を受賞。2009年末にグーグルの次世代技術開発を担う「Google X」の共同創業者に抜擢され、立ち上げに関わっていたころは、子育て真っ盛りの時期とも重なる。どのように私生活とキャリアを両立させていたのだろうか。
 
「本当に大変でしたね。心理的にもフィジカル面でも思ったより大変でした」と、ヨーキーは口を開く。
 
「4人の子を産んだとき、いずれも産休・育休(maternity leave)の仕組みがない大学や企業で働いていました。最初の双子の娘が誕生した当日も研究室にいて『陣痛が定期的になったら病院に連絡して』と言われていたので、定期的になってきたけど大丈夫かな?と思いつつ病院へ行きました。そしたら未熟児として急きょ産まれることになり......双子の娘は病院で1カ月入院しました」
 
それでも研究者時代は、夫も教授だったことからお互い柔軟に働くことはできた。だが、その後、働いたスタートアップでは「育休をとるなら仕事をやめてください」とまで言われたことも。4人目の息子の出産時には、産まれて2時間後にはベッドの上で仕事の電話を受け取った。
 
ただ、身体の負担が大きく彼女が歩けるようになるまでは5日かかった。そして8日目には仕事に復帰。オフィスに生後まもない子を連れ、ベビーシッターに預けつつ授乳時は仕事を中断した。「私の場合、両立というより、仕事と私生活を混ぜていました」
 
だが、乳幼児の授乳や夜泣きで、夜は寝られない。すると、仕事の質も効率も下がっていく。こんな日々ではやっていけないと何度も思った。

「家事をしないお母さんはいない」という呪縛

ワシントン大学の教授からグーグルXに転職をする際に、夫と子3人とともにシアトルからシリコンバレーへ引っ越しした時のことだ。ローカルな町で、ベビーシッターを見つけるのに苦労した。そこで、夫と時間をずらすことで子育てと仕事に対応。ヨーキーは、子どもを寝かせるとともに睡眠をとり、朝3時(深夜未明だが)に起き、仕事をして子どもの登園・登校の準備をして、午前に働く。午後から夜にかけては夫が仕事をして、ヨーキーが子どもの面倒を見る。そんな生活リズムは4番目の子が10代になるまで、10年ほど続いた。

 日本の家庭に生まれ育ち「家事をしないお母さんはいない」という考え方には、先進的な生き方をするヨーキーでさえも悩み、反芻した。本人は「全部100%やることは本当に無理!と思った経験は20回くらいはありますよ」と笑う。
 
そこで考えた。「何を自分でやって、何を人に任せるのか」と。家事のアウトソーシングを積極的に活用することを考えたのだ。
 
まず、食後の皿洗いは夫に任せるなど、小さなことから始めた。「夫もやりたくなく、時間も手間もかかること」については外部にアウトソーシングをすることに。
 
例えば、家の掃除やご飯の作り置き。アメリカ特有の問題として、子どもの学校や習い事への送迎に車の運転が必要だが、意外と時間がかかるため、送迎を外部にお願いしたことも。さまざまなトライを繰り返し、少しずつ「自分でやりたい、自分でやらなくては」と気づくこともあった。
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文=督あかり 写真=小田駿一

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