パイロット不足を解決する「AI旅客機」と航空機メーカーの挑戦

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航空大手Boeing(ボーイング)のデーブ・カルフーンCEOは2023年1月、航空業界の公然の秘密を明かした。「民間航空における自動操縦の未来は本物だと思う。ただし、これには時間がかかる。信頼性の高い認証プロセスが必要だ」と彼は、Bloomberg TV(ブルームバーグTV)の取材に語った。

今から10年前、この話題はほとんど憶測に過ぎなかった。しかし、現在では、航空業界の多くの人が2020年代の終わりまでに小型の自動操縦の航空機が乗客を運ぶようになると考えている。そして、重大な事故がなければ、その後の10年でパイロットを乗せない大型の旅客機が飛ぶようになるかもしれない。

民間航空への自律運転型の航空機の導入は、北カリフォルニアのスタートアップ、Xwing(エックスウィング)などの企業が主導する小型の貨物機から始まることになりそうだ。

同社のCEOのマーク・ピエットは、「私たちは最も広く使われているエクスプレス貨物の航空機であるセスナを遠隔操作できるように改造している。当社は、まず貨物航空分野にこのテクノロジーを導入することが最良の選択肢だと考えている」と語った。

過去数年間、エックスウィングはカリフォルニアを中心にテスト飛行を重ねてきた。同社は、人間のパイロットを持つ航空機と同様の飛行計画を提出するが、機体の操縦はあらかじめプログラムされている。「ワンクリックで操縦ができる。システムを起動させれば、そのミッションが実行される」と、ピエットは言う。

しかし、このテクノロジーが連邦航空局(FAA)によって認定されるまでの間は、人間のセーフティパイロットが搭乗する必要がある。「セーフティパイロットは、システムを中断して手動飛行に戻すことはできるが、それ以外は何もせず、システムを監視するだけの退屈な仕事だ」とピエットは説明した。

コックピットが存在しない貨物機

自動操縦の貨物機の開発に取り組んでいるのは、エックスウィングだけではない。フォーブスは、Honeywell(ハネウェル)社のアーバンエアモビリティおよび無人航空機担当のステファン・フィマットに話を聞いた。同社は、ボーイングに加え、Gulfstream(ガルフストリーム)やEMBRAER(エンブラエル)の航空機の自動操縦システムを製造している。

フィマットは、招待者限定の業界のカンファレンスで使用したパワーポイントをフォーブスに公開してくれた。そこには、ハネウェルのクライアント企業が製造する航空機の写真が掲載されており、貨物用もあれば、旅客用もある。ある写真には、コックピットすら持たない貨物機に男たちが箱を積み込んでいる様子が写っていたが、これは、ロードアイランド州に本社を置くTextron(テキストロン)が昨年買収したスロベニアの軽飛行機メーカーPipistrel(ピピストレル)社製の機体だった。

フィマットは、これらの企業の取り組みが「基本的には、セーフティパイロットが搭乗するところから始まって、彼らが居ないものに移行していくはずだ」と語った。「そのうちの何社かは4〜5年以内に実現したいと考えており、何社かは10年程度の目標を設定している」。
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編集=上田裕資

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