だが、そうした状態は2006〜07年と2012〜20年の安倍晋三政権の下でがらりと変わった。歴代最長となった安倍氏の首相在任中、国際政治、防衛戦略、貿易政策という3つの分野で日本の国際的な役割は大きく変化した。
この変化を引き起こした主な「要因」は2つある。1つは安倍元首相その人、もう1つは習近平率いる中国の存在だ。両者の関係はアイザック・ニュートンの「運動の第3法則」として説明できるだろう。自然界の作用には、それと大きさが等しく、向きは反対の反作用が必ず存在するという法則である。
元首相は確かに、日本を新たな役割に導くビジョンと政治的リソースをもっていた。ただ、中国の習近平指導部も、日本の「変身」(もしそう呼ぶのが適切だとすれば)を促す一因になった。何年にもわたり、中国当局の船舶などが日本の施政下にある領域に繰り返し侵入し、南シナ海でも同様の係争を引き起こしているために、日本政府は不安感を募らせることになったからである。
日本の変身ぶりについては先日、シドニー大学の米国研究センターで所長を務めるマイケル・グリーンとも論じた。彼は近著『Line of Advantage: Japan’s Grand Strategy in the Era of Abe Shinzo』で日本の変化の歴史的経緯を振り返っている。