アジア

2023.02.24

強権・習近平が招いた「安倍外交」という強力な反動

安倍晋三元首相(左)と中国の習近平国家主席(Photo by Kim Kyung-Hoon-Pool/Getty Images)

過去10年にアジアで起きた最も重大な変化の1つは、地域で指導的な役割を果たす国として日本が台頭してきたことである。ときには日本の動きが米国より速いこともあった。何十年もの間、日本は、米国主導の外交政策枠組みの「忠実な」(これはやや過小評価された表現だ)メンバーとして活動することに満足していたようだった。とくに第二次大戦後まもない時期は、日本にはより大きな役割を果たそうという意欲も能力もなく、(米国も含めて)太平洋地域諸国で日本にそうしてほしいと望む国もなかった。日本は歴史的に貿易イニシアチブのたぐいにも消極的で、たいていは米国との貿易摩擦の結果、やむを得ず少しだけ行動するという程度だった。

だが、そうした状態は2006〜07年と2012〜20年の安倍晋三政権の下でがらりと変わった。歴代最長となった安倍氏の首相在任中、国際政治、防衛戦略、貿易政策という3つの分野で日本の国際的な役割は大きく変化した。

この変化を引き起こした主な「要因」は2つある。1つは安倍元首相その人、もう1つは習近平率いる中国の存在だ。両者の関係はアイザック・ニュートンの「運動の第3法則」として説明できるだろう。自然界の作用には、それと大きさが等しく、向きは反対の反作用が必ず存在するという法則である。

元首相は確かに、日本を新たな役割に導くビジョンと政治的リソースをもっていた。ただ、中国の習近平指導部も、日本の「変身」(もしそう呼ぶのが適切だとすれば)を促す一因になった。何年にもわたり、中国当局の船舶などが日本の施政下にある領域に繰り返し侵入し、南シナ海でも同様の係争を引き起こしているために、日本政府は不安感を募らせることになったからである。

日本の変身ぶりについては先日、シドニー大学の米国研究センターで所長を務めるマイケル・グリーンとも論じた。彼は近著『Line of Advantage: Japan’s Grand Strategy in the Era of Abe Shinzo』で日本の変化の歴史的経緯を振り返っている。
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編集=江戸伸禎

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