アジア

2023.02.24 11:30

強権・習近平が招いた「安倍外交」という強力な反動

安井克至
最後に経済面では、日本は安倍元首相のしたで貿易イニシアチブに本腰を入れ始め、米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)を包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP、TPP11)として立て直し、合意に持ち込んだ。米国とのデジタル協定を含め、自由貿易協定(FTA)による日本の貿易カバー率は以前の17%から80%超に高まった。

日本の変化には安倍元首相と習の関係以外の要因もある。米国のバラク・オバマ政権と続くドナルド・トランプ政権は同盟国の間で信頼を生み出さなかった。また、北朝鮮の核実験やミサイル試射も日本政府の懸念をいっそう深めた。

変わったのは日本だけではない。台湾は兵役義務期間を4カ月から1年に延長した。オーストラリアはクアッドを積極的に支持している。

つまり、中国は長年にわたってアジア各国への関与や働きかけを続けてきたあげく、望んでいたのとは正反対の結果に直面している。なぜこんなことが起きてしまったのか。

筆者の結論は、中国の対外政策は依然として、まずもって国内政治によって規定されているからというものである。その国内政治は、押しの強さが報われ、摩擦を生じることが強さの証しとみなされるところに特徴がある。一般に、台頭する国にとっては、自制できるかどうかが最大の課題になる。力をどう使うかよりも、どう使わないかのほうが大事になるということだ。中国では、他国の領土への侵犯をよしとする有権者が大勢を占めているようだ。だが、中国がそうした行為をやめないかぎり、日本をはじめとする国々は必然的に対応に動くだろう。ニュートンの原理はしっかり働いている。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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