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2023.02.23

レトロゲームに対する不健全なノスタルジー

Getty Images

最近、NINTENDO64の人気ゲーム『ゴールデンアイ 007』が、Nintendo SwitchとXboxバージョン向けに 再リリースされたことで、昔のゲームに対するほろ苦い懐かしさについての書き込みがSNSをにぎわしている。たしかに理解できる。任天堂のゴールデンアイは1997年当時、大きな、いや巨大な存在だった。

2023年に初めてプレイしている人は、この反応の悪いコントロールとぼやけたテクスチャーの醜くて動きの鈍いFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)が、コンソールゲーム業界、いや、ゲーム市場全体における、このジャンルに対する認識を一変させた記念碑的存在であることを理解するのに少々苦労するだろう。

開発元のRare(レア)がジェームズ・ボンドのライセンスにNINTENDO64の魔法をかける前、ゲーム専用機におけるFPSはあまり真剣に受け止められていなかった。『Doom(ドゥーム)』や『Wolfenstein(ウルフェンシュタイン)』などのゲームは、(少なくとも私にとって)基本的にパソコンで動くの手の届かない夢の世界であり、プレイするためには最新のハードウェアが必要なのが当たり前だった。90年代後半になるまで、家のコンピュータといえば不細工なMacintosh(マッキントッシュ)であり、ダイヤルアップでインターネットにつなぐのがやっとだった。

しかし、PlayStation、セガサターン、NINTENDO64といったスリムなボックスに入ったマシンでは、FPSゲームはまだ確固たる地位をもっていなかった。市場はあったのだろうと私は思うが、Rareは、ポリゴンを多用したピアース・ブロスナン(ジェームズ・ボンドを演じた俳優)ですべてを変えた。Polygonがこの瞬間をうまく要約しているので、ぜひ読んでみて欲しい。

「長い年月が過ぎ、シューティングゲームそしてビデオゲーム全体が、大きく変わってきたが、ゴールデンアイの栄光は変わっていない。今このゲームを、マルチプレイヤーを妥協したXboxバージョンでプレイするにせよ、コントロールを妥協したSwitchハージョンでプレイするにせよ、多くの再リリース版プレイヤーにとって、それは過去を振り返る経験である。しかし、個人の記憶のノスタルジアを抜きにして、1つの大きな歴史の一部として見た時、ゴールデンアイはまったく違った存在となる。それは、ジャンル、メディア、そしてカルチャーの移り変わりを表すアーティファクトだ」
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翻訳=高橋信夫

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