──産学連携、人材育成も、今後重要なポイントになりそうです。
メタバース、特にプラットフォーム事業に関しては、参入の初期コストが高くなっていると感じます。
僕たちクラスターが今やっているようなことは、3、4人のシードのベンチャーが一年で作れるかというと難しい。これまでのSNSや動画サービスだとまだそれができた。例えばインスタグラムがフェイスブックに買収された時の従業員数も十数人でしたから。
アプリやインターネットのマーケットが発達しているから起こることですが、どんどんコストが上がっている。それが今後、コミュニティ作りの次の第二フェーズ、アルゴリズムの勝負になってくると、ますます資本の争いになってくる。
どれだけ機械学習のエンジニアを抱えられるか、競争力のあるチームが作れるかといった、規模や組織力の戦いになってくるわけで、さらにスタートアップには厳しい環境になっていきます。いまビッグテックたちが流行りに乗るのも、とても早いですし。
フェイスブックの方針変更も、創業から17年経って、あれほどの規模の企業になったにも関わらず、いきなり社名まで変えて「メタバースにフォーカスします」と言えるなんて、すごくスタートアップ的だと思います。
ある程度の規模の組織やシステムの根幹をしっかり早く作って、グローバルでビックテックと渡り合えるか、が勝負です。
2023年は「グローバル」進出へ
──課題はありますか?「グローバル展開」です。これまで集客の基盤にもなってきたイベントの需要に応じて、営業も開発チームも日本の案件に注力してきましたが、今年からグローバル化していきたいと考えています。東京ゲームショウ出展で多数問い合わせをいただいたりと、手応えは感じています。
>> その他現状の課題とメタバースの「ビジネス活用」のポイントとは? 続きは、後編(3月29日公開)にて。
加藤直人◎1988年大阪府生まれ。大阪府立天王寺高校から京都大学理学部に進学し、宇宙論と量子コンピュータを研究。同大学院中退後、約3年間ひきこもり生活を過ごす。2015年にVR技術を駆使したスタートアップ「クラスター」を起業し、2017年、大規模バーチャルイベントを開催することのできるVRプラットフォーム「cluster」を公開。現在はイベントだけでなく、好きなアバターで友達としゃべったりオンラインゲームを投稿して遊ぶことのできるメタバースプラットフォームと進化している。2018年に『Forbes JAPAN』の「30 UNDER 30 JAPAN」(世界を変える30歳未満30人の日本人)に選出。2022年、集英社より『メタバース さよならアトムの時代』を上梓。