30代後半を迎える選手との契約は縮小の一途をたどる大リーグで、今年8月に37歳を迎える右腕が結んだ6年契約は“超異例”。
米メディアも「42歳まで!」と驚きを持って伝え、何よりダルビッシュ自身が10日(同11日)に本拠地サンディエゴのペトコ・パークで行われた記者会見で「この歳で6年は、ないこと。未だに信じられない。皆が “ドッキリ”を仕掛けているんじゃないか、と思っている」と語った。
過去に例を見ないベテラン選手の長期契約を分析する。
30代後半選手への大型投資は「ギャンブル」
今オフのFA市場を振り返ると「トップ4」は、ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)が9年総額3億6000万ドル(約474億円)、フィリーズのトレイ・ターナー内野手(29)が11年総額3億ドル(約395億円)、パドレスのザンダー・ボガーツ内野手(30)が11年総額2億8000万ドル(約368億円)、ツインズのカルロス・コレア内野手(28)が6年総額2億ドル(約263億円)と並ぶ。いずれも野手で、年齢層は20代後半から30歳まで。これから全盛期を迎える油の乗った世代が顔を揃えた。
今季FA投手で、35歳以上の複数年契約は5人だけ
投手陣を見渡すと、契約年数の最長は、ヤンキースのカルロス・ロンドン投手(30)の6年総額1億6200万ドル(約213億円)。年俸総額では、レンジャーズのジェイコブ・デグロム投手(34)が1億8500万ドル(約243億円)で、4歳年下のロンドンを上回ったが、契約期間は5年に抑えられている。では、30代後半の選手になるとどうか。
昨年、自身3度目のサイ・ヤング賞を獲得したジャスティン・バーランダー投手(39)のメッツとの総額8666万ドル(約114億円)契約は、平均年俸こそ同僚のマックス・シャーザー投手と並ぶメジャー最高額だが、年数は2年。
また、現役2位の通算223勝を挙げているザック・グリンキー投手(39)のロイヤルズとの契約は単年の850万ドル(約11億円)で、球界最年長のリッチ・ヒル投手(42)のパイレーツとの契約も単年800万ドル(約10億5000万円)。
複数年契約を勝ち取ったのは、今回のダルビッシュの再契約まで、先のバーランダーと、メッツのアダム・オッタビノ投手、レッドソックスのクリス・マーチン投手、同じくレッドソックスのケンリー・ジャンセン投手の4選手だけだった。
たとえ実績を積んだ一流選手でも、30代後半を迎えると短期契約が定説となっている。
ドジャーズのクレイトン・カーショー投手の例が分かりやすい。
26歳で、2014年に7年総額2億1500万ドル(約283億円)の大型契約を結んだが、満了の2年前に3年総額9300万ドル(約122億円)の契約を結び直し、2022年に単年1700万ドル(約22億円)、今オフも単年2000万ドル(26億円)で再契約した。
3度のサイ・ヤング賞を受賞し、タイトル争いの常連だった一流左腕も、近年は腰や肩の負傷で故障者リスト入りする機会が増えた。36歳を迎える来季以降についても、ダルビッシュを超えるような長期契約を結ぶとは考えにくいだろう。
つまり、選手にとっては、30代前半までに迎えるFAが長期契約を狙うピーク時で、その契約が満了した次のステージでは単年、長くて2年契約を年々更新していくのが一般的なのだ。