コロナ禍で法人向け事業として手がけた、バーチャル渋谷をはじめとしたメタバース空間での「街の再現」や、入社式や企業イベントから音楽ライブ、スポーツ観戦まで、様々な業界・企業とコラボした「バーチャルイベント」で業績を伸ばした。toC事業でも、「バーチャルSNSアプリ」としての大規模アップデートを果たし、リーディングカンパニーのポジションを確立した。
まだ黎明期と言われる今、メタバースの可能性をどう捉え、何を目指しているのか。クラスター代表取締役CEOの加藤直人氏に聞いた。
>> 後編:メタバース「ビジネス活用」のポイント 日本最大級「cluster」に聞く
──はじめに、メタバースプラットフォーム「cluster」について、教えてください。
スマホやPC、VRなど好きなデバイスを使って、ご自分のアバターを簡単に作成して、メタバース空間で遊んだり、人と交流したりして楽しむアプリです。
色々な企業などとコラボして開発しているバーチャルの街やイベントにも、このアプリを通じて参加していただくことができます。
──メタバースとは何かといった、定義の議論が続いています。どのようにお考えでしょうか。
「メタバース」という言葉で今の大きなトレンドが表現されるようになった、と僕はただただとてもポジティブなことだと捉えています。あまり言葉やその定義の議論には興味がないんです。
これまで動画がリードしてきたインターネットの世界が、これからはゲームや3DCGの技術が主体となって発展していくという大きな流れに名前がついたことで、人やお金の集まり方が劇的に変化しました。
バーチャルイベント開催数で断トツ世界一に
──2022年は、クラスターにとってどんな年でしたか?バーチャルの世界で何かやっている会社というくらいの認識から、メタバースプラットフォームという事業内容をイメージしてもらえるようになりました。
2020年から21年にかけては、事業の柱であるバーチャルイベントが、コロナ禍のリアルで集まれない状況の受け皿となってきましたが、昨年はその状況が少しずつ落ち着いてきて、今後はよりバーチャル空間自体が生活に根付いたものに発展していくのではないか、という期待値の高まりとともに成長できた一年でした。
年間200件のイベントを開催し、案件数では断トツで世界一位(同社調べ)です。累計動員数も2000万人を超え、7月には「cluster」アプリのダウンロード数も100万を突破しました。
その後も順調に推移しており、次第にワールドと呼んでいるメタバース空間でのユーザー滞在時間も伸びてきて、現実世界と同じような感覚で生活してくれている人も増えているといった状況です。
──加藤さんがフォーブスの「30 UNDER 30 JAPAN」に選出された2018年当時には、世界初の有料VR音楽ライブ開催で注目されていました。国内最大級のメタバースプラットフォーマーとなった現在までの、事業の変遷について聞かせてください。
もともと2015年の創業時から、現実世界の生活全てをバーチャル空間を持っていこうという考えがありました。
僕たちだけではなく業界全体が目指している方向も大体同じでしたが、クラスターはそのゴールに向かって、イベントから入っていこうと決め、2018年頃はバーチャルYouTuberの盛り上がりとともに、VRライブを多く開催していました。