河童橋からパリへ 売るだけじゃなく「説明したい」 

熊澤大介(左)と中道大輔(右)

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

Vol.28は、前回に引き続き東京合羽橋道具街の釜浅商店4代目店主、熊澤大介がゲスト。ブランドコンセプトの「良理道具」を柱にした今後の展開について話を聞いた。


中道:前回に引き続き、合羽橋商店街にある釜浅商店4代目店主熊澤大介さんをお迎えしてお届けします。

熊澤さんは2011年に創業100年(当時)の釜浅商店をリブランディングされました。そのリブランディングで最も価値があったとおっしゃったのが「良理道具」、「良い理(ことわり)のある道具」というブランドコンセプトです。

このコンセプトのもと、自分たちが商品、知識、経験に絶対的な自信を持っていることを、さらに多くの人たちに知ってもらいたいと考え、2018年にはフランスにパリ店をオープンされました。「良理道具」をベースに、この先にどんな展開を描かれていますか。

熊澤:「良理道具」は僕らにとって本質の部分ですから、間違いなく今後も変わらないと思いますし、やること自体も変わらないと思います。ただ、伝え方や表現の仕方は時代に合わせて変わっていくべきだと思います。

うちが扱う料理道具はモノですけど、その向こう側にはそのモノの背景があります。それがつくられている産地であったり、職人さんのことだったり、もっというならそれが生まれ育ってきた文化があったり。そういったことにまで思いをはせてお客さんに伝えていくことが僕たちの仕事だと思っています。

道具を作る人にも使う人にもそれぞれ思いがあると思うんですけど、例えば作る人は使う人の使い勝手をわかっているとは言いきれません。使っている人もどんな風に作られているか知らないから、無理な要求をしてしまうこともある。

唯一どちらの気持ちもわかる立場にあるのが、作り手と使い手の間にいる僕たちです。ですから片方の言葉を翻訳してもう片方にわかりやすく伝えることも僕らの役割。今までもそうしてきたつもりですが、伝える努力が足りなかったんだろうと思うんです。

より多くの人に伝えていくには、やっぱり海外に出ていきたい。こんなに素晴らしいものなのに日本だけではもったいないじゃないですか。僕たちの場合は幸いにもパリに拠点があるので、そこをベースにどんどん広げていきたいという思いがすごくあります。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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