伝統ある「良理道具」を伝えていく 釜浅商店のリブランディング

写真:釜浅商店

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

Vol.27は、東京合羽橋道具街の釜浅商店4代目店主、熊澤大介がゲスト。熊澤のこれまでの経歴と、歴史ある老舗をリブランディングするに至った経緯を聞いた。




中道:今回は東京合羽橋道具街にあります釜浅商店の4代目店主熊澤大介さんをお迎えしてお届けします。

熊澤さんは1974年浅草生まれ。ファッションの専門学校を卒業後、家具店勤務を経て、1999年に釜浅商店に入社。2004年に4代目店主になられました。2011年、創業から100年を迎える老舗でありながら大々的なリブランディングをされて、合羽橋でひときわ目立つデザインのお店に。2018年にはパリにもお店をオープンさせて今に至ります。

もともとはご実家とは違うところで働いて、戻って来られています。どんな流れだったんですか。

熊澤:洋服の仕事をしたくてファッションの専門学校に行ったんですけど、いざ勉強してみると、もしかしたらちょっと違ったかもしれないと思って。他にもライフスタイル周りの、家具だったりインテリアだったりにも興味があって。当時ミッドセンチュリー家具が流行っていて、恵比寿にあるアンティークショップによく通っていたんです。そこのオーナーに誘われて、数年そこで働いていました。

中道:それで1999年に家業に戻られたのはなぜだったのでしょう?

熊澤:父からは「何をやってもいいけど、25歳になったら家に帰ってこいよ」とずっと言われていました。でも、絶対に戻らないと思っていたんです。ところがどういうわけか25歳のタイミングで、「うちの仕事もいいかも」と思って。たぶんうちの仕事が好きだったんでしょうね。

親父はモノづくりが好きでした。「こういうの、ありませんか?」と、合羽橋(商店街)の入口の店から相談しては断られ続けたお客さんが最後にうちに来て、話を聞いた親父が意気投合して、「それ面白いね、ちょっと作ってみようか」みたいな感じになるんです。

そうなるともう親父はのめり込んじゃうので、商売度外視で夜中までいろいろやって。時には僕も駆り出されて実験に加わったりしていました。

そういうのをずっと見て育ったので、すごく面白いことをやっているなという印象があって。ただ、それ以上にファッションやインテリアをやってみたかったんです。

だけどある時、衣食住ということで考えればうちの仕事もそこにあてはまるなと、ふと思ったんです。それに「食」は人間にとって絶対になくてはならないものなので一番可能性があるような気もして、面白そうだなって。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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