マーケティング

2023.02.27 17:00

伝統ある「良理道具」を伝えていく 釜浅商店のリブランディング

中道:デザインのインスピレーションが、ファッションや家具が好きで広がって、戻ってみたらこの中でもいろいろできそうだと思ったんでしょうね。

熊澤:いろいろやれるかもと思うきっかけになったのは、出版社にいた学生時代の友だちから、土に埋める宝箱を作ってほしいと言われたことでした。

土に埋めるから密閉できるステンレス製がいいなとか、きちっと鍵で閉まるものがいいかもしれないとかいろいろ考えて、長い付き合いのある工場に相談したんです。

ちょうどその工場の息子さんが、別の仕事を辞めて戻ってきたタイミングで。年齢も近く、意気投合していろいろなことを面白がってやっているうちに、すごくいいものができたんです。頼んでくれた友だちも喜んでくれて。あ、こんなこともできるんだな、この感じをいろいろなことに広げていけそうだなと思ったのが、戻って2、3年目ぐらいだったと思います。

中道:そこから今の店構えになっていったんですね。

熊澤:合羽橋はどこの店も商品がダーッと積んであって、どこに何があるかわからない。かと言って聞くにも聞きにくい、みたいな。それがいわゆる合羽橋スタイルで、お客さんがプロの料理人さんで、どこに何があるのかだいたいわかっていたからそれでよかったんです。

でも、景気の影響でだんだんプロのお客さんが減り、一方で一般のお客さんが増えてきたんです。リブランディング前の釜浅商店

リブランディング前の釜浅商店(写真:釜浅商店)


中道:
僕も2年ぐらい前に日本の食文化を世界に出そうと思って、合羽橋にどんなものがあるか調べに行ったことがありますけど、1回じゃ何がどこにあるのかわからないですよね。

でも初めて行った時から釜浅商店だけは鮮明に覚えています。そういう意味で言うと、ブランディングをきちんとやるのはものすごく意味があることだと思います。どんな感じで始めたんですか。

熊澤:店の上が住まいだったので、僕は合羽橋で育ったんです。子どもの頃は常にお客さんがたくさんいる活気のある商店街でした。だけどバブルが崩壊して飲食店の元気がなくなり、ネットやホームセンターでも業務用のものが買えるようになり、年々人が減って静かになっていきました。

リブランディングをした2011年当時、これまでと同じことを続けているだけだと遅かれ早かれ厳しくなるだろうと漠然と感じていました。何かしなければと思った時に、本当に素人考えですけど、かっこいいWebサイトにすれば違うんじゃないかと思ったんです。それで友だちにデザイナーさんを紹介してもらいました。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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