特にコロナ禍はユーザー数が360倍(2020年1月と2023年1月を比較)に増加。富士通、伊藤忠商事、朝日新聞社など大手企業で導入が進む。営業はすべて、顧客からの問い合わせに対して案内を行うインバウンドのみだといい、マネジメントのあり方に課題を感じている企業の多さがうかがえる。
カケアイの特徴の一つは「事前準備」だ。1部下は1on1で話したいトピックと上司に期待すること(アドバイスが欲しい、話を聞いてほしいなど)を前もって設定し、実施後は匿名で満足度をカケアイに入力する。
結果は、数十万のユーザーデータを踏まえて可視化され、上司は自分の得意不得意を理解することができる。同社CEOの本田英貴(ほんだ・ひでたか)も「具体的なアドバイスをするのは得意で、話をきくのは苦手だと自分では思っていたが、AIの解析は正反対だった」という。
変化を強いられる上司・部下間のコミュニケーションに、カケアイはどう貢献しているのか。ユーザー急増の理由を本田に聞いた。
マネジメントに失敗し、鬱を発症
カケアイは2018年の創業。サービス構想のきっかけは、リクルートホールディングスで人事部マネジャーを務めていたときの本田自身の経験にある。「自分はマネジメントが得意だと思っていました。しかし、あるとき部下から匿名で『あなたには、誰もついていきたくないって知ってます?』というコメントをもらったんです。それがきっかけでマネジメントに悩み、鬱を発症しました。
生産性や離職率は上司次第で大きく変わると言われています。それにも関わらず、多くの上司たちのメンバーとの関わり方は個人の力に依存し続けている。自分と同じ失敗、そしてその失敗が招く組織やメンバーの不幸を無くしたいという決意で起業しました」
テクノロジーの力で、属人的なマネジメントを無くしたい。そんな想いで、当初は1on1に限らないピープルマネジメント全般を補助するサービスを開発した。
「働き方改革などを受け、HRテック領域のトレンドは2017年頃から変化が起きてきました。企業視点の『一律管理』というスタイルから、従業員視点の『個別支援』をいかに実現するかへ。
カケアイは、従業員への新たなアプローチとして注目されましたが、コロナの発生から引き合いは一気になくなり、事業の継続そのものが危うい状態に陥りました」