「海外スタートアップへの投資であること。IPO(新規株式公開)ではなく、株主の入れ替えに伴う部分売却であることが、日本のスタートアップ・エコシステムにとって新しいモデルになるのではないか」
そう話すのは、時価総額約8600億円の決済代行のGMOペイメントゲートウェイ副社長で、VCのGMO Venture Partners・ファウンディングパートナーでもある村松竜だ。
村松は、2005年にGMOベンチャーパートナーズを設立し、これまで7つのファンドを組成。12年からはシンガポールに移住し、東南アジア、インドをはじめとした海外スタートアップへの投資も行ってきた。国内外200社以上の投資・設立関与先があり、22社が上場、21社が時価総額1000億円以上の企業という実績があるチームを率いている。
そんな村松が新たな可能性について言及するのが、シンガポールに本社がある、世界的なゲーム内決済サービスを運営するCoda Paymentsへの投資だ。同社は、村松が13年に立ち上げた決済特化型ファンド「GMO Global Payment Fund」(約20億円規模)の投資先第1号で、シード投資、リード投資家としてシリーズA投資を行なった企業だ。
そして、22年4月、世界的機関投資家のSmash Capi tal、VCのInsight Partners、シンガポール政府系ファンドGICが同社の少数株主持ち分を取得し、6.9億ドルの投資を行った。いわゆる未上場株式の流通(セカンダリー)で、評価額は米ブルームバーグの報道によると25億ドルだという。
「シリーズB以降の資金調達が難航したが、我々とSkype共同創業者の故トイボ・アンヌスなどが『いまは厳しいが将来性は間違いない』と長く支え続けて黒字化を実現。以降、一気に数十億円の黒字まで成長した。直近では急速にグローバル展開が進み、2年前と比較すると評価額が10倍以上に。グローバルプレイヤーになるポテンシャルがある企業への投資がきわめて大切だとあらためて思った」(村松)
同社は現在、当初のインドネシア、東南アジア市場に加え、欧州、南米、中東、インド市場へと展開。世界50以上の地域で数千万人のユーザーに、ゲーム内通貨やプレミアムコンテンツを提供している。
「Coda Paymentsが10年先を見据えながら、さらに大きなIPO、その後の成長を目指していく。その過程の資本政策であり、我々にとっても、一部現金回収したキャピタルゲインが約128億円。約20億円のファンドにとって6倍以上のリターンになる。我々の投資家にも非常に多くの『お返し』ができ、さらに、今後も同社の株主として応援し続けられる。これからもこうした方法をとりたいと思ういい投資事例だ」