イケアのトイレブラシの名前に。スウェーデン湖水地方の反撃

「日本人は毎日、着物を着ている。刀を持ち歩いている。全員、空手の使い手である」
「ブラジル人はみんなサッカーがめちゃめちゃ上手い」
「アメリカ人はいつもジョークを言い続ける陽気なキャラクターの人ばかりである」

こうした、広範に流布している誤ったイメージは、海外からの訪問客を誘客しようとする時に、時に邪魔になる。しかし、有名なだけに、“逆利用”する手もあるかもしれない。

スウェーデンで言えば、それは、同国の有名ブランドであるIKEA(イケア)の製品名にあった。

同国の美しい湖水地区であるBolmen(ボルメン)は、なんと、トイレブラシの製品名として使われているのだ。他にも、ゴミ箱や棚の製品名として、幾つもの観光地の地名が使われている。そこで、Visit Sweden(スウェーデン観光局)は、“Discover the originals(オリジナルを発見しよう!)”を実施した。


Swedish Tourism: Discover the Originals (Cannes advertising 2022) (Film Category Bronze Lion)

「ボルメンは、イケアのトイレブラシ以上」

このキャンペーンは、2022年6月にフランスで開催されたカンヌライオンズ2022で、クリエイティブ・ストラテジー部門ゴールドなどを受賞した。

カンヌライオンズとは、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つアワードである。また、クリエイティブ・ストラテジー部門は、優れたストラテジー(戦略)=“アイディアの背景にあるアイディア”を表彰する部門だ。

キャンペーンのスタートは、ボルメン湖地区の新しいスローガンである「ボルメンは、イケアのトイレブラシ以上」の発表イベントだった。ボルメン湖地区で行われたこのイベントには、当該地区の政治家や居住者が出席し、メディアも招待された。

日本の首長の中には、もしトイレブラシの製品名に自分達の地域名が使われていたら、怒って抗議する人もいそうだ。だが、この地区の人々とスウェーデン観光局は、怒って抗議するどころか、イケアの世界的な知名度と人気をユーモアで逆利用した。自虐的にも聞こえる、観光地としては異色のスローガンを作り出した。
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文=佐藤達郎

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