イケアのトイレブラシの名前に。スウェーデン湖水地方の反撃

そして、このイベントに合わせて、イケアの製品名とスウェーデンの観光地の関係をユーモラスに描いた動画を発表した。湖の風景を紹介している場面に、いきなり同じ名前のトイレブラシが出て来ると、思わずクスっと笑ってしまう。そして何故か、地域の美しさが強調される。

同時にウェブサイトでは、同様の視点で21の観光地を紹介した。逆に言うと、実施したことは、主にそれだけだ。

限られた予算で21億回のリーチにつながった

「著しく限られた予算しかなかった」とカンヌライオンズへの応募書類には書かれている。だから、“人々やメディアが取り上げたくなるようなストーリーを重視し、PR起点のキャンペーンを展開したのだ”、と。

現在において、PRはマーケティング・コミュニケーションに欠かせない要素となっている。もちろん、例えばテレビCMなどマス広告の威力はいまだに絶大なものがあるのだが、いかんせん莫大な予算を必要とする。そして、莫大な予算を使える人や組織はごくごく一部であり、“限られた予算”で一定の成果を出す必要がある人や企業は、たくさん存在するだろう。

果たして結果は、予想以上だったと言う。49カ国で700以上の記事に取り上げられ、300もの投稿でも言及された。それは、21億回もリーチした可能性を示唆している。CNNやBBC、そしてロンリー・プラネットなど、ニュースだけでなく旅行、ライフスタイルといった様々なジャンルのメディアに取り上げられた。

観光局のウェブサイトである“visitsweden.com”の平均視聴時間は82%アップを記録し、読者数は目標の148%、滞留時間は水準値の176%となるなど、当初の目論見からすると、目覚ましい結果を残した。

こうしたやり方は、何も国レベルの観光振興に限ったことではない。地域活性化が叫ばれる日本の各地方においても、活用できるところがあるかもしれない。

文=佐藤達郎

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