政治

2023.02.16 12:00

「高高度物体」が気球や飛行機でないなら何? ホワイトハウスの説明は曖昧

米軍は「空飛ぶ円盤」を実験したことがあり、1950年代のAvro Canada VZ-9AV Avrocarはその1つだが、それらはジェットエンジンと独特の空気力学によって翼のない形状から揚力を得る単なる航空機だった。この種のデザインが、通常の飛行機の設計に太刀打ちできたことはない。
 

1950年代の空軍独自の「空飛ぶ円盤」プロジェクトはジェットエンジンが推進力だった。成功はしなかった(Wikimedia Commons

この境界から外に出ると、見たことのない奇妙な科学と推進システムの領域に入ってしまう。だからマスコミは空軍に、それがエイリアンの乗り物ではないかと真顔で質問したのだろう。

しかしながら、米軍は風変わりな推進力コンセプトに対して特に興味を示しており、反重力テクノロジーの研究に資金援助までしている。たとえば1990年代にユージーン・ポドクレトノフは、超伝導体を回転させることによって重力を遮断できると信じていた。そういうプロジェクトは、知られている限り、良い結果を生み出していない。しかし、ある風変わりなテクノロジーが、特異な(ほとんどの物理学者にとって)説明し難い結果を一貫してもたらしており、何もないところから推進力を生み出すことに成功しているように見える。

2002年に英国の発明家、ロジャー・ショーヤーは、先端を切り取った円錐形にマイクロ波を閉じ込めることで、一方の端で他方より強い圧力が得られ、差し引きで推進力を生み出すと主張した。彼はこの仕組みをEmDrive(EMドライブ)と名づけた。

EMドライブが生み出す推力は1オンス(約28g)の何分の1とごくわずかだが、衛星や宇宙探査機を動かすために使われているシステムには匹敵する。ショーヤーによると、進化した超伝導体バージョンであれば、翼のない飛行機が宇宙を往復したり、高い高度でホバリングしたりできる可能性があるという。
次ページ > 中国でもEMドライブのテクノロジーを追求

翻訳=高橋信夫

ForbesBrandVoice

人気記事