北米

2023.02.15 14:30

米軍戦闘機、ヒューロン湖上空の「謎の物体」への初弾をミス

ブリュッセルのNATO本部で記者会見に応じる、総合参謀本部議長、マーク・ミリー陸軍大将(Getty Images)

ブリュッセルのNATO本部で記者会見に応じる、総合参謀本部議長、マーク・ミリー陸軍大将(Getty Images)

2月12日にヒューロン湖上空の未確認物体を撃ち落とすために出動した米国戦闘機部隊が、1発目のミサイルを外していたことを軍の最高幹部が説明した。過去数日間に撃墜された3つの謎の物体の詳細が、徐々に漏れ出す中の出来事だった。

米国総合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将は、ブリュッセルで開かれていた国際防衛会議で、F-16が発射した「1発目は命中しなかった」と記者団に告げた。

最初のミサイルは「害をおよぼすことなく」ヒューロン湖に落下し、2発目が物体を撃墜したとミリーは話した。

物体は撃たれた後、湖に「ゆっくりと降下した」と国防省当局がCNNに伝えている。

国防関係者は物体について、8角形でひもがぶら下がっていたと説明し、撃ち落とした理由は、その高度(2万フィート、約6km)が民間航空機への脅威であるためだと話した。

ミリーは2月13日の記者会見で、10日以降に撃ち落とした3つの物体を、繰り返し「気球(balloons)」と呼んでいたが、記者団から用語について尋ねられると「物体(objects)」と言い直した。政府と国防省が使用してきた分類だ。

43万9000ドル(約5800万円)。これが米国が一連の物体を撃ち落とすために使用したAIM-9Xサイドワインダー・ミサイル1発の値段だという。このレイセオン・テクノロジーズ社製ミサイルは、短距離の物体を撃墜するために設計されているといわれており、熱追跡技術を使って標的を捕らえる。

2月10日、米国戦闘機部隊はアラスカ北海岸沖上空4万フィート(約12km)を移動中の「高高度」物体を撃ち落とし、11日にはカナダ、ユーコン準州上空の同じく4万フィートの物体を撃ち落とした。当局は、回収作業は進められているが、アラスカとユーコンという遠隔地のために迅速な作業が妨げられており、ヒューロン湖の物体は冷たい湖水に飛び込んだと説明した。物体の正体が何であり、誰が作ったのかは未だに不明だ。政府が唯一説明したのはエイリアンの関与を排除したことで、カリーヌ・ジャン・ピエール報道官は13日にこう語った「最近の撃墜事象にエイリアンや地球外生命が関わっている兆候はありません」。国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は13日に、一連の物体は無人であり風に乗って移動していたと見られると話している。

米国上院議員全員が14日に物体に関する説明を受けたが、新たな情報はほとんどなかったようだ。マイク・リー上院議員(共和党・ユタ州)はCNNに、説明で得られた物体に関する情報は「ないに等しい」と語った。

これらの未確認物体が撃ち落とされたのは、戦闘機部隊がサウスカロライナ州沖で中国の偵察気球とされるものを撃墜した数日後のことだ。問題の偵察気球はそれ以前に数日間、国を横断して浮遊していた。米国北方軍は最近の声明で「すべての重要なセンサーと電子部品、および構造の大部分」を回収したと語った。

翻訳=高橋信夫

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事