「それらを『気球(balloon)』には分類しません。理由があって『物体(object)』と呼んでいます」と米国北方軍のグレン・ヴァンヘルク将軍はメディア向け説明会で述べた。別の幹部も謎を深めただけだった。
「破片を回収できるまで、種類を断定するつもりはありません」と国家安全保障報道官がBBSに伝えている。
中国の偵察気球であることが明確に特定された侵入の直後にやってきただけに、同じように高高度を同じ方向からゆっくりと移動してききた物体を、同じ種類のものではないと想定することには無理がある。デザインは異なるかもしれないし、無害な気象気球もあったかもしれないが、それらがさらなる「lighter-than-air-craft」(空気より軽い、自力で浮遊する飛行体)でないというのは偶然の域を越えているように思える。
しかし国防省はこの解釈に強く抵抗し、さらに奇妙なことに、それらを航空機(aircraft)と呼ぶことさえ拒否し「物体」に固執している。未確認飛行物体のように。
レンガでさえも、弾道軌道に乗せて飛ばすことが可能であり、砲弾から弾道ミサイル、衛星にいたるまであらゆる発射物が初期の推進力によって高度を保っている。しかし、地球の大気圏内で飛行を続けるためには揚力が必要だ。気球、飛行船、軽航空機などの空気より軽い飛行体でさえ、温められた空気や低密度ガスによる浮力や、空気より重い飛行機が作った気流によって揚力を得ている。飛行機の場合、翼の下の気流から、ヘリコプターやVTOL(垂直離着陸機)ジェット機の場合はローターの推力や空気を下向きに噴出するジェットから揚力を得ている。
それがすべてだ。大まかにいって、あらゆるものが気球か航空機だ。最もありそうな説明は、あの「物体」が気球であるというものだが、何らかの理由によって、そのように断定することが難しいようだ。何かを小型自動車の大きさであると説明した上で、空中にとどまるための目に見える手段がないといっている場合、そこには飛行機の翼やヘリコプターのローターがないことを暗示している。