小売業者にとって、返品は、購入後の問題として、件数が増加し、複雑化しており、オンラインとオフラインの小売売上高の増加に伴い、今後も拡大することが予想されます。全米小売業協会(NRF)とAppriss Retailの報告書によると、2021年の米国における返品額は7610億ドルに達し、これは米国の小売売上高全体の16.6%に相当します。
返品率は2020年に記録した10.6%から顕著に増加し、これはEコマースの普及拡大と、消費者が実店舗で商品の確認や試着をしたくないことが要因と思われます。NRFによると、2021年の返品はドルベースで、前年から78%増加しました。
NRFによると、オンライン注文の返品は2021年に2180億ドル、米国のEコマース小売総売上高の20.8%に達しており、Eコマースにおける返品の課題はさらに大きくなっています。Eコマースの普及が進めば進むほど、オンラインでの返品の課題は大きくなる一方です。
返品を回避する最善の方法は、そもそも返品を防ぐことが重要であることは明らかですが、米国の小売市場で注目されている返品管理には、主に以下4つの戦略があります。
1. 小売業者は、AIなどのツールを活用して、より好みに合った商品を消費者が見つけられるようにすることで、将来の返品率を下げることができます。
2. 店舗で返品を受け付けることで、消費者の返品発送による経済的・環境的な負担を軽減し、また、店舗へ呼び込むことで来店を促進することができます。
3. 返品をまとめて工場やフルフィルメント・センターに出荷することで、返品に必要な輸送回数を減らすことができます。
4. 返品処理にかかるコストが商品の再販価格よりも低い場合、商品を返品してもらわずに、返金のみを行うことができます。
図8. 主な返品戦略
顧客体験
8. 従業員支援ツールにより、従業員の能力を高め、顧客体験を向上させることができる実店舗をもつ小売業者がEコマースのみを運営する小売業者と比較して持つ利点は、店員が提供する消費者とのエンゲージメントの機会です。
しかし現在、小売業者は、従業員の高い離職率、外食産業などの他業種との人材獲得競争、事前にインターネットで調べた情報をもとに来店する顧客など、さまざまな課題に直面しています。
しかし、幸いなことに、小売業者が顧客および従業員の満足度を高めるためのテクノロジー・プラットフォームが存在します。
クライアンテリングは、テクノロジーを使って顧客をよりよく知り、永続的な関係を築くことを目標に、顧客の好みや嗜好を理解し、それに対応することを目的としています。図9は、AI/MLソフトウェアによってアクセス可能なデータと、それにより生成されるインサイトを示しています。
図9. クライアンテリングにおけるインプットとアウトプット
人材獲得競争が激化する中、従業員の満足度は重要な課題であり、従業員の幸福度は顧客体験に影響を与える可能性があります。最近のCoresight Researchの調査によると、小売業、ホテルやレストラン、その他のサービス業に従事する回答者の53%が、勤務に際し、好きな場所、時間、曜日を選択できるようになれば、従業員の定着率と満足度の向上につながると考えていることがわかりました。
離職率が高く、顧客と店員との関係が希薄になりがちな小売業では、店員に携帯型タブレットを持たせ、顧客データを実用的なインサイトに変換し、アップセルの機会を作るようにすることもできます。