加熱する金融大手のブロックチェーン導入と「トークン化」の力

マスターカードCEOのマイケル・ミーバック

世界2位のクレジットカード会社であるMastercard(マスターカード)のCEOのマイケル・ミーバック(55)は「常に新しい決済テクノロジーが存在する」と語る。「最初に50年前のメッセージング技術を使ったカードがあり、次にISO 20022という規格でリアルタイム決済が実現した。そして、ブロックチェーンが登場した。テクノロジーが解決できる課題はたくさんある」

マスターカードは1月下旬、同社の「トークン化取引」のトランザクションが前年から38%伸びて月間20億件を突破し、110カ国でデジタル決済を可能にしたことを明らかにした。その最大のメリットは、不正行為の減少だという。

マスターカードは、16桁のカード番号を、非常に強固なセキュリティを持つデジタルデータに置き換えトランザクションに使用している。同社は、銀行や加盟店との連携で、預金を含むさまざまな資産をトークン化し、複数のパブリックおよびプライベートなブロックチェーン上で追跡可能にする予定だ。

「あらゆるものがトークン化され、安全に取引される世界が実現する」とミーバックは語る。

フォーブスは2月7日、毎年恒例の「ブロックチェーン50」の2023年版を公開したが、マスターカードは、そこに選出された22の金融企業のうちの1社だ。Web3がスキャンダルにまみれ、非難を浴び続けている中でも、マスターカードやBlackRock(ブラックロック)、 JPMorgan(JPモルガン)、Fidelity(フィデリティ)などの金融大手は、ブロックチェーン技術の最大の支援者となっている。

加速する金融大手のクリプト導入

マスターカード以外のTradFi(traditional finance)と呼ばれる伝統的金融企業も、ミーバックと並んでクリプト業界にエールを送っている。

Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のデービッド・ソロモンCEOは2022年12月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した記事で、FTXが破綻したことを理由に、新たなテクノロジーを否定すべきではないと述べた。彼の主張のキーポイントは「我々のように当局の認可を受けた金融機関の指導の下で、ブロックチェーンのイノベーションは花開くことができる」というものだ。

同社のような大手は、暗号資産に直接投資することを避けているが、その基礎となる技術には静かに取り組んでいる。ゴールドマン・サックスのデジタル資産部門は、昨年11月、Santande(サンタンデール)とSociété Générale(ソシエテ・ジェネラル)と共同で、欧州投資銀行のために1億ユーロ(約141億円)の債券を引き受けた。通常、このような債券の販売には5日ほどかかるが、デジタル化によってわずか60秒で終わったという。

一方、フィデリティは、個人投資家向けの暗号資産取引サービス「フィデリティクリプト」の立ち上げに向けて、インスタグラムの広告を開始した。「ビットコインとイーサリアムを取引するための早期アクセスリストに乗ろう。あなたが信頼できるコインに投資してください」とその広告は呼びかけている。
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編集=上田裕資

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