「トークン経済」で資金調達が多様化 イグジットの形にも変化

日本のWeb3の現状について議論された「Tapping into the Japanese Web3 Market」というディスカッション。左から2番目が六人部生馬さん

ブロックチェーンゲームなどのWeb3事業を手掛けるMinto代表の水野和寛が、業界のオピニオンリーダーを招き「Web3 × クリエイターの未来」をテーマとした対談をお届けする本連載。

第3回は、Web3の世界を舞台としたスタートアップを支援する六人部生馬(むとべ・いくま)さん。“Crypto Builders Incubator”として、起業家たちの資金調達やプロジェクトの進行支援を行う「Tané(タネ)」の創業者だ。

前編では、六人部さんに、「冬の時代」と言われるWeb3の投資環境について聞いた。後編では、トークンの普及によって多様化する資金調達の今を探る。


デザイン費をトークンでまかなう

水野:現在投資しているプロジェクトはどんなものですか?

六人部:例えば、サービスDAOと呼ばれる領域です。僕らが投資している「Zypsy」というサービスは、トップクラスのVCのアーリーステージの投資先にデザインリソースを提供します。その代わりに、デザイナーは報酬としてトークンや新株予約権などエクイティを受け取るんです。アーリーステージの企業にとって捻出が難しいデザイン費がトークンでまかなえる。デザイナーにとっては自分のスキルを提供し、オーナーシップを持って仕事を受けられるようになります。

水野:面白い。クリエイターが集まってDAO化して仕事を受ける、みたいなのはありですよね。

六人部:各国の規制による違いはあるものの、報酬の設計も株式などと比べてはるかに柔軟です。今後もそういうスタイルのところは増えていくような気がしますね。

あとは「Superlocal」という位置情報ベースのSNSです。特定の場所に行ってチェックインし、写真を投稿するとトークンがもらえる。

実はこれ、日本のユーザーが多くて。日本は「ポケモンGO」のようにコツコツ歩いて稼ぐ“位置ゲー”系のプロダクトと相性がいいんですよね。

水野:位置情報を使ったゲームやSNSもたくさんありますもんね。ちなみに、Tanéからは株だけでなくトークン発行で投資を受けることもできるんですか?

六人部:はい。「株式のみ」「トークンのみ」「両方」のパターンで対応可能です。投資する金額自体は平均で10万ドル〜20万ドルが多く、ステージとしてはプレシード・シードなどのプロダクト開発前の段階からシリーズAくらいまでを対象としています。

NFTも資金調達手段に

水野:Web3のイグジットってなかなか画が描きにくいのではと感じます。トークンを発行して終わり……みたいなのもある気がしているんですが。

六人部:企業がDAO化したり、トークンを発行したりといったいろいろな形が想定されると思います。ただポジティブにとらえれば、起業家にとっては調達の手段が増えるとも考えられますよ。IPOよりも先にトークンが上場して、売買が可能となるので、流動性を得ることもできます。

ゲーム系やNFTプロジェクトならNFTが新たな調達手段になるでしょう。投資家をまわって資金を集めるよりも、自分のアートやプロジェクトを見せて、NFTオーナーになってもらうみたいな形もアリです。まだまだやりかたが出尽くしていないので、エコシステム全体で一緒にトライしていくべき部分ですね。
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文=水野和寛 編集=露原直人

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