どうやら中でも米国は、在宅ワークモニターにおける「先進国」のようだ。BBCによれば、社員の在宅ワークをハイテクツールでモニターする米大手企業は、コロナ・パンデミック勃発によって実に約2倍になったという。
ニューヨーク・タイムズがポッドキャスト配信する番組「ザ・デイリー」によれば、テキサスのあるソフトウェア会社からファイナンスの仕事を時給200ドルで委託されていたトップ・ファイナンス・エキスパートのキャロル・クレーマーという女性は、月末、給与明細を見て愕然としたという。
なんと雇用者である企業は、彼女のキーボードの動きを専用のソフトウェアで記録していたうえ、10分おきに作業画面のスクリーンショットをキャプチャ、それどころかモニター越しに彼女自身も撮影していたことがわかったのだ。
結果、彼女が月末に受け取ったのは、「キーボードが叩かれている時間」「マウスが動いている時間」「モニターの前に座っている時間」に対してのみの賃金だったのである。給与総額が予想を大きく下回ったのはそれが原因だった。
まさに彼女は、「目に見えぬビッグブラザー」の監視のもとに仕事をしていたのである。
SFばりの職場ディストピアか。「オフラインの仕事」への対価ゼロ?
つまり、コーヒーを入れたりトイレに立ったり、宅配のドアベルに応えたりしている時間はカウントされない。さらに10分毎にモニター越しに撮影されるから、10分のうち9.5分アクティブでも、撮影時にモニターの前にいなければ、遡った9.5分間、ひいては該当の10分ぶんの支払いがまるまるないというのだ。もっというと、オフラインの仕事をしている時間もカウントされない。プリントアウトされた分厚い資料を読んだり、紙の参考資料を閲覧したり、同僚と電話で仕事の話をしたりする時間に対しての給与支払いはないのだ。
「ザ・デイリー」ホストのマイケル・バーバロは「これはまるで、SFばりの職場ディストピアだな」とコメントしている。
ちなみに先のBBCの記事によれば、ウェブカメラを通して従業員の「瞳の動き」をスキャンし、集中しているかどうか査定する企業も出てきているという。