過去のデータが性悪説に導いた?
雇用者側からの監視がエスカレートしている背景には、被雇用者側の「前科」もあるようだ。新型コロナによるパンデミック前にも社員のモニタリングをしていたケースがあり、その際に取られたデータがひどかったことも発端のひとつだ。ポルノサイトを見たりゲームをしている、などのありがちな例のほか、本業の企業から給料が出ている時間帯内に別の会社の仕事をしているといった事実が、モニタリングによって発覚したことも少なくなかったようだ。
ともあれ、コロナ禍をきっかけに世界的にリモートワークが広がり、定着しつつある現在、雇用者たちが組織を「スケルトン化」する必要がある、と感じ始めていることは確かなようだ。
監視することで従業員のパフォーマンスを上げるとともに、給与コストを切り詰めたい企業側の思惑ももっともではある。だが、彼らの意図はかならずしもうまく機能しているばかりではないようだ。アリゾナ州立大のデビッド・ウェルシュ教授のチームが実施した調査によれば、監視システム下に置かれている雇用者たちは監視されていない雇用者たちに比べて、わざとゆっくり仕事したり、これみよがしに頻繁に休憩を取ったりしている、という結果が得られたという。
今後、「仕事の評価基準」「仕事の本質」はますます性悪説にもとづいて変容し、「職場のディストピア化」が深刻になるのだろうか?
ヒトが社会性の強い生き物である以上、仕事のモティベーションと「信頼」との関係も視野外に追いやれないのは、少なくとも間違いないだろう。