ソーシャルワーカーやフリーランスも
「Becker's Payer Issues」によれば、数十万人の従業員を抱える世界最大のヘルスケア企業「ユナイテッドヘルス」も、「キーボードを叩くのをやめる」たびに「アイドル時間」として就業記録に残しているという。ソーシャルワーカーらも例外にはしていないらしい。またこの、水も漏らさぬリモートワーク監視の潮流はフリーランス・ワーカーにも及んでいる。「BuzzFeed」などによれば、米国の大手フリーランスプラットフォーム「アップワーク」を通じて仕事を委託されているフリーランスたちは、自ら10分ごとにスクリーンショットを撮って提出することを義務づけられているというのだ。
これまでも「ブルーカラーワーカー」がモニターされているという例はよく聞かれた。
たとえばアマゾン。物流倉庫でピッキングと梱包をするワーカーに監視モニターを装着させる。GPSデータも取るから、たとえばトイレに行っている時間は時給から差し引かれる。
トイレの時間を節約して給料を上げるために「おむつ」をして働くワーカーがいるという話題はかなり以前、メディアを賑わした。
だが、モニタリングの「魔の手」は今や、ホワイトカラー、大卒、院卒の頭脳ワーカーたちにも及んでいる。冒頭の「時給約2万7000円」という高級取りのMBAホルダーにしてトップ・ファイナンス・エキスパートの例は、まさにその代表例である。
「マウス・ジグリング」のフリーウェアなどで“対抗”?
一方、雇用者、つまり「モニターされる側」も黙っているだけではないようだ。彼らからの迎撃も始まっている。在宅勤務中の離席を離席と見せないためのソフトやスクリプトが開発されているのだ。日本でも、フリーソフトフェアのサイト「窓の杜」を見ると、パソコンのUSBポートに差し、マウスを自動で動かす「マウス・ジグラー」や自動クリックソフト「おーとくりっか~」、一定間隔でマウスを小刻みに左右に揺らし、スクリーンセーバーやスリープモードへの突入を防止する「マウスふるふる」などのフリーウェア、および有料ソフトウェアも多く頒布されている(そもそもの開発目的が、“「離席」を離席と見せかけないため”ではないものもあるだろう)。
また、マウスを自動で動かすインストール不要のスクリプトも公開されているし、もっとアナログ式に、おもちゃの電車にマウスを乗せて線路の上を走らせ、動いているように操作する動画などもYouTubeなどにアップされている。
まさに、モニターする側、される側のいたちごっこが始まっている。