BUAISOU、5人の小さな工房がグローバルブランドになれた理由

BUAISOU マネジメントの西本京子氏。写真提供:CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)2月5日まで開催中の展覧会「Absolute Blue: BUAISOU Works with Japanese Natural Indigo」の展示作品「 百色幟」の前にて

「日本の伝統工芸を世界に」という標語は、正直もう聞き飽きた。しかしながら、少子高齢化が進み、経済的な成長も見込めない日本において、伝統を絶やすことなく、むしろ良質なコンテンツとして世界に打ち出していくことは、今後ますます重要となる。それも、一時的に盛り上げるのではなく、継続して支持されるブランドを築き上げていく必要がある。

そんな中、ニューヨークやイギリス、インドなど、世界各国からワークショップの依頼が殺到し、ナイキやトリーバーチ、ジミー チュウなどの著名なブランドとコラボし、さらには香港で大規模な展覧会を開催するなど、独自のグローバル路線を直走る徳島の藍染工房がある。それがBUAISOU(ぶあいそう)だ。

たった5人の小さな工房が、なぜグローバルで熱烈に支持されているのか。ブランディングをディレクションしている西本京子氏に話を聴いた。


「グローバルを目指すにあたり、まず始めに“伝統工芸”の定義について考える必要があります。一般的に伝統工芸というと、昔から行われている技法を忠実に再現していくものと思われがちです。でも技法というのは、実は何百年、何千年と進化を繰り返しながら受け継がれてきたものです。今、伝統工芸と言われているものは、私感ですが、江戸時代から昭和にかけての手法を教科書的になぞらえているものが多いように思います」

確かに伝統工芸というと、古き良き製法をそのまま継承するのを良しとする風潮がある。ところが西本氏の言うように、昔の職人たちも、常にもっと良いものを作るにはどうしたら良いかと葛藤し、幾多のイノベーションを起こしてきた。良いものは継承し、時には大胆に進化させながら、今日の伝統工芸を作り上げてきたのだ。

「BUAISOUの代表で藍師・染師の楮覚郎(かじかくお)は、伝統工芸を背負っているという意識は全くありません。昔の職人たちをどうしたら越えられるのか、という純粋な気持ちで、先人たちに本気で挑んでいる。

結果的に天然素材にこだわることになるので、古き良き伝統を受け継いだかのように捉えられますが、技法についてはたとえ一片でも、新しく独自のものを開発しています。例えば独自の表現をするためであれば、ヒートガンを使ったり、エアーコンプレッサーなどを使うこともあります」

(右)BUAISOU代表、藍師・染師の楮覚郎氏。地域おこし協力隊を経て、2015年に徳島でBUAISOUをメンバーと共に設立。写真はカリフォルニアのワークショップへ向かう様子 撮影: Mylene Alcayaga

このように伝統を重んじながらも、現代的な技法を駆使してモノ作りをすることで、BUAISOUの秀逸なプロダクトは生み出されている。

ただ、この伝統と現代的な技法を融合させる塩梅が非常に難しい。やりすぎると突飛なものになり、伝統工芸の枠を逸脱してしまう。逆に教科書的な方法を重んじすぎるとイノベーションは起こせない。BUAISOUの手掛けるプロダクトや作品は、どれも絶妙なバランスで成り立っている。一体どうすれば、このアウトプットに至るのだろうか。
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文=国府田 淳

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