BUAISOU、5人の小さな工房がグローバルブランドになれた理由

BUAISOU マネジメントの西本京子氏。写真提供:CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)2月5日まで開催中の展覧会「Absolute Blue: BUAISOU Works with Japanese Natural Indigo」の展示作品「 百色幟」の前にて

会社として立ち上げる際も、最初から世界を目指すということでニューヨークに会社と工房を作り、徳島出身の投資家等から調達した出資金をニューヨークに設立した会社に入れ、世界各国でワークショップを行うことにも専念した。

「藍染って仕込みに10日程掛かるので、職人の渡航費や滞在費を考えると、海外でワークショップを行うのは通常、ハードルが高いんです。でも我々は最初からグローバルを目指したので、そこに資金を投入し、アメリカ、フランス、シンガポールと躊躇することなく、さまざまな国に出向きました。

その結果、BUAISOU=海外で活躍しているというイメージを作り上げることができましたし、ワークショップは2年目からすべて招待していただけるようになりました。自分たちの世界を表現し、物事の本質的な価値を伝ていくためには、とれる限りのリスクをとって飛び込んでいくことが必要だと思います」

ブランドを立ち上げる際、小規模であればなるべくお金を使わずに展開することは鉄則であり、伝統工芸の場合は補助金を活用するケースも多い。しかしながら、BUAISOUはしっかりと自分たちの熱意とポテンシャルを投資家に伝え、自ら資金を確保し、それを惜しみなく活用することで、スピード感を持ってブランド認知を確立した。

ビジネスシーンでは当たり前のようにも思えるが、職人が主導する伝統工芸の分野ではファイナンスはおざなりになりがちだ。職人とビジネスマネジメントの役割分担がしっかりできていたことも、勝因の一つであろう。

BUAISOUの魅力を伝える上で特徴的なものに、インスタグラムなどにUPされる写真が挙げられる。特に青く染まった手に、鮮やかな緑の藍の葉っぱを持った写真は、多くの海外メディアで使用され、BUAISOUのイメージ戦略の一翼を担っている。実はこの写真、プロのカメラマンではなく西本氏が撮影したものだ。

「私は学生時代に報道カメラマンを志したこともあり、“一枚の写真が世界を変える”と信じています。写真については、大学の写真部時代に基礎知識を身につけ、建築写真家のアシスタント経験や、様々な国々をバックパックしながら撮影をしていたのである程度のリテラシーはありますが、プロには及びません。でも、私は常に工房で職人たちと一緒にいるので、最も美しい瞬間を知り尽くしています」


これまであまり撮られることがなかった職人の青く染められた手を美しく切り取り、かつ藍染が植物からできている自然由来の染料であることを世界へ伝えたアイコニックな写真

確かにBUAISOUのSNSの写真を見ると、プロのカメラマンが数時間いただけでは撮れないような、現場の躍動感を感じる。日々、職人に寄り添いながら、変に作り込まれていない製作風景を撮影できるのも、彼らの強みだ。また投稿に関しても、米国のインスタグラムの責任者が工房を訪れた際に「理想的な使い方をされていますね」と絶賛したほど、巧みに行われている。
次ページ > コラボレーションは年に1社のみ

文=国府田 淳

ForbesBrandVoice

人気記事