また、その写真がどういうところに届いて、どういう影響を及ぼすかということを明確にイメージしながら投稿している。ただお洒落な写真を上げているように思われますが、写真自体にも投稿にも、細心の注意を払っています」
BUAISOUはナイキやジミー チュウなど、名だたるブランドとコラボレーションをしているが、自ら営業したことは一度もない。ほとんどのブランドがSNSやインターネットでBUAISOUを発見し、Webサイトのお問い合わせにメールが届いたところから、プロジェクトがスタートしている。このようなプル型でブランド展開できているのは、徹底したイメージ戦略の賜物であろう。
「コラボレーションのプロジェクトは一年に一社と決めていて、他はすべてお断りしています。メディアの取材も必要以上にお受けしませんし、いくら有名なブランドから打診があっても、自分たちの方向性と合わない場合は、お断りしています。
恐らく、私、生意気だと思われて、評判が良くないと思います。でも、ブランドを守っていくには、小さい企業だとしても諂う(へつらう)のではなく、しっかりとこちらの意志を伝え、労働に見合う対価を提示し、時にはキッパリとお断りすることも必要だと思っています」
伝統工芸などに携わっていると、良いものを作っていれば売れる、いつか誰かが見てくれると信じ、ひたすら真摯にモノ作りに勤しむケースが多い。また、日本では特にそのような姿勢が美とされる風潮もある。
しかしながらグローバル化が進み、情報過多な世界においては、どのように知ってもらい、いかにブランドを成長させていくのかも含めてモノ作りに向き合わないと、なかなか結果を出しにくい。それこそ、職人の幸せも、日本の伝統工芸の底上げも叶わず、ただ地味に朽ちていくことになる。
香港のアートセンター「CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)」で2月5日まで開催中の展覧会「Absolute Blue: BUAISOU Works with Japanese Natural Indigo」
「なぜ今回、BUAISOUのモノ作りについてではなく、ブランディング戦略についての取材をお受けしたかというと、日本の若い世代の人たちに、もっとグローバルで勝負してほしい、という想いがあるからです。私の祖父母は徳島が昔、生産量日本の一位二位を誇った、鏡台を作る工場を営んでいました。しかし、鏡台産業の急激な衰退を受け、私が幼い頃に閉鎖されました。そのようなことになることを少しでも防ぎたい、という気持ちもあります」