一方アメリカでは、2010年代後半からマインドフルネスを社会に役立てる動きが盛んになっている。先日行われたマインドフルネスの国際カンファレンス「Wisdom2.0 Japan」では、その大きなムーブメントが紹介され、社会に役立つマインドフルネスが世界標準になっていくことが示された。
同カンファレンスの主催者で、日本のマインドフルネス第一人者である荻野淳也氏に「マインドフルネス、その先へ」というテーマで話を聞いた。
Wisdom2.0は、サンフランシスコで2009年から行われているマインドフルネスの国際カンファレンス。テクノロジー時代のウェルビーイングを志し、TwitterやFacebookの共同設立者、Googleのエグゼクティブなどが登壇したり、科学者、起業家、宗教家、社会活動家が集い、マインドフルネスの実践と社会における可能性を探求している。
日本での開催は今年で3年目。今回のテーマは、“The inner world changes the outer world”だ。「私たちの内側にある意志と叡智を、外側の世界と繋ぐ探求を行いました」と荻野氏。
当日はWisdom2.0の創設者ソレン・ゴードハマー氏、グーグルSIY創設者チャディ・メン・タン氏 、禅僧 ジョアン・ハリファックス博士、曹洞宗僧侶 藤田一照氏など、マインドフルネスにおける国際的なリーダーたちが集った。
10月に開催されたWisdom2.0Japanは、リアルとオンラインのハイブリッドで行われ、総計250名が参加。会場では、横澤和也氏による石笛で場を清めてから開会された。
「パンデミック、気候変動、戦争など、数々の大きな困難に人類が直面している現在、誰もが『このままじゃダメだ』と、本能的に感じている」と荻野氏。その事実は当然、マインドフルネス実践者にも突きつけられており、ただ自分の心の平安のために坐っているだけでいいのか、と自分たちの在り方を問いただす動きが活発化してきている。
とはいえ、すぐにアクションを起こすことは難しい。その大きな原因の一つとして、人の内側の平和と外側の平和が、別々に扱われがちだという現状がある。
「外側の平和、つまり世界平和を志して活動をしている人は、自分の心の平安をおざなりにしていたりする。逆に瞑想によって内側の平和を整えたり、悟りを追い求めている人は、外の世界には関心がないのではないか」と登壇した禅僧の藤田氏は問いを投げかけた。