「マインドフルネス」のその先へ。社会へ役立てるための叡智

ミスターマインドフルネスの異名を持つ、Wisdom2.0 Japan共同創設者 荻野淳也氏


「僕たちがこの社会で生きている限り、誰かと繋がらない人生なんてありえないですよね。だからこそ、禅僧ティク・ナット・ハン師(マインドフルネスを世界に広めた功労者)がよくおっしゃっていた、“インタービーイング=相互共存”が重要だと思うんです。マインドフルネスによって、自分の内側を整えるのはもちろん、他者や社会との関係性も整える。これこそが世界平和に繋がっていく」と荻野氏は語る。

インタービーイングとは、あらゆるものは相互に依存して存在するという考え方だ。瞑想においては、マインドフルネス(気づき)と、コンパッション(慈悲)が重要だとされるが、インタービーイングはその関係性を言い換えた言葉とも言え、ティク・ナット・ハンはその価値に重きを置いた。

「日本の仏教の坐禅は、何かを目的としたり、考えることをよしとしないのが基本です。ただ座る。でも、同じ仏教でも、インタービングやワンネスのような世界観があれば、自分が社会のために何ができるのか、貢献できることは何なのか? という心が立ち上がってくるのは、自然なことだと思います」

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(右から)Wisdom2.0創設者のソレン・ゴードハマー氏、Wisdom2.0 Koreaのユ・ジョンウン、グーグルSIY創設者 チャディ・メン・タン氏

このインタービングを実践し、マインドフルネスを社会に役立てる重要性を示した人物がいる。アメリカのシェリー・ティギェルスキー氏だ。マインドフルネスとレジリエンスの講師として、学校、NPO、企業”などで講演会を行う社会活動家である彼女は、COVID-19が猛威を振るう最中、パンデミック・オブ・ラブというプロジェクトを立ち上げた。

これは当初、グーグルフォームで何かを欲している人と、何かを与える人を繋げるというシンプルな活動だったが、世界18カ国で200万人以上の人が繋がり、100億円以上の物資が困った人に届けられ、世界的なムーブメントとなった。バイデン大統領から直々に賞賛の入電があったほどだ。

シェリー氏はビーチで1人で瞑想を始め、その後、彼女が呼びかけた仲間が仲間を呼び、1500人の瞑想コミュニティに発展していったという経験がある。その経験からシェリー氏は、“Showing Up(姿を現す)”で世界を変えられる、という気づきを得たという。

Showing Upとは、ただマインドフルネスで内面を磨くだけではなく、他人のためにありのままの自分の姿を現すこと。そして、内面の気づきにとどまるだけでなく、その気づきを他者や社会のための具体的な活動へとつなげていくことだと、彼女の活動を例に言うことができるだろう。

まず、最高の世界は、最高の自分から始まるという認識を持ち、その上で内面の心と外の世界を繋げることだけが、唯一、この混迷を極める世界でサバイブする方法だとシェリー氏は説く。
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文=国府田淳

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