「マインドフルネス」のその先へ。社会へ役立てるための叡智

ミスターマインドフルネスの異名を持つ、Wisdom2.0 Japan共同創設者 荻野淳也氏


では、その内の平和と外の平和を統合し、社会に役立てるために、どのような心構えが必要なのだろうか。

その答えは、インド・ダラムサラからオンラインで登壇した禅僧 ジョアン・ハリファックス博士が教示してくれた。それはビギナーズマインド(無知の知)と、コミュニティの重要性である。

null
禅僧・社会活動家・文化人類学者であるハリファックス博士(左上)は世界のトップリーダーのメンターであり、被災地・刑務所・緩和医療など、最も困窮した現場で生きる叡智とリーダーシップを体現している

ビギナーズマインドは、サンフランシスコ禅センターを立ち上げた日本人の禅僧 鈴木俊隆老師が説いた教えで、スティーブ・ジョブズの座右の銘としても知られている。目の前にあることを何の先入観も持たず、ただ今に気づくことから立ち上がる、ありのままの心を大切にする、という考え方だ。

「パンデミックや気候変動が最たる例ですが、未曾有の困難には、今までの自分の経験や知識が何も役に立たないことがある。そんな時に、自身が身につけてきたものを一旦すべて手放し、謙虚な気持ちで今と向き合い、自分自身の内側から湧き上がる叡智を立ち上げていく必要があるのです」と荻野氏。

もう一つの重要なファクターは、コミュニティだ。ハリファックス博士は、コミュニティに参加するだけでも十分に世界は変えられると説く。現にWisdom2.0をとってみても、心や社会の平和を願うたくさんの人と繋がり、互いに叡智をシェアし、それを深め合って、平和の情緒を育んでいる。それを繰り返し、輪を広げることで、世界を希望に導くと皆を勇気づけた。

null
登壇者とオーディエンスが共に輪となり、フラットに意見交換することもWisdom2.0ならでは。親戚の集のような温かい雰囲気に包まれた

世界では今、宗教への関心が薄れ、無宗教の人が増えている。一方で、仏教はマインドフルネス、コンパッションという形で、支持が広がっている。つまり人々は、絶対的な存在や教えではなく、叡智やフィロソフィーを共にするコミュニティを求めているのだ。

Wisdom2.0 Japanの終了後、スピーカーもオーディエンスも、皆が口を揃えて「言葉にならないくらいの深い気づきと感動を得ることができ、満足している」と振り返った。

「言語化できないというのは、その人の固定概念のはるか先にある叡智やインスピレーションを得たからだと思うんです。コミュニティに参加した人たちが繋がり、互いに叡智をシェアし、深い絆と共に未来への希望を見い出せた。そのような活動を重ねていくことにより、集合無意識による平和の情緒が醸成され、世界平和を実現できると信じています」


荻野淳也◎慶応義塾大学卒。外資系コンサルティング会社やベンチャー企業のIPO担当や取締役を経て、リーダーシップ開発、組織開発の分野で活躍。社会と組織、リーダーの変容を目指し、国際カンファレンスのプロデュース、大学院や企業でのリーダーシップトレーニングやウェルビーイング経営の研究に従事している。Google SIY認定講師。著書「マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる」(かんき出版)他。

連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
過去記事はこちら>>

文=国府田淳

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事