BUAISOU、5人の小さな工房がグローバルブランドになれた理由

BUAISOU マネジメントの西本京子氏。写真提供:CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)2月5日まで開催中の展覧会「Absolute Blue: BUAISOU Works with Japanese Natural Indigo」の展示作品「 百色幟」の前にて

「モノづくりに純粋さや自由さがあるか、そしてどこまで深く理解しているか、というところだと思います。例えばビジネスとして成功させようとか、家業として継いで職人になった場合ですと、どうしてもモチベーションが、ビジネスや家のためになりがちです。

楮は自分たちが生み出した「藍」という色が、エジプトのミイラが包まれていた布に一片の藍色が見受けられるように、何百年も、強いては何千年と未来に残ることを純粋に願っている。もしBUAISOUが解散して1人になったとしても藍を触り続ける、という人生を掛けた覚悟で挑んでいます。

また特定の師匠に弟子入りして学んだわけではないので、モノ作りに対しての自由さも持ち合わせています。加えて、大学でテキスタイルを学び、布の構造や特性、染色についての知識があり、今でも興味を持ち、資料を読み漁り、学び続けているので、より深みがあってユニークな発想が生まれるのだと思います。

別の視点で言えば、私が藍の産地である徳島で生まれ育ちながら、藍の業界を知らなかった、触れてこなかった、ということも、全く異なるBUAISOUオリジナルの藍染のイメージを作り出すことができた一因であると思っています」

彼らは、グローバルへ発信する上でも、“すべてにオープンで、嘘がない”ということを重要視している。伝統工芸の現場に取材に行くと、「ここは撮影しないでください」などと独自の技術を隠して守ることがあるが、BUAISOUでは素材から道具、技法に至るまで、すべてを明かしており、工房に行くと事細かに説明してくれる。

インド、ケララ州で行われた国際カンファレンス「Sustainability of Natural Dyes」で行ったワークショップ時の写真

「インターネット時代になり、オープンソースであることが人々のスタンダードになっています。そんな中で、何かを隠しても、逆にファンのエンゲージを妨げてしまうだけ。すべてを曝け出し、お客様も気持ちよく、自分達も100%胸を張れる状況を作るのが、ブランドの強さに繋がります。もしやり方が分かったとしても、他が追随できないクリエーションをすればいい。そういうものこそ、圧倒的なオーラを纏うのだと思います」

BUAISOUが世界に出ていく戦略やプロセスにも、そうした潔さが貫かれている。

「徳島の中学の先輩で、社会人になってもお世話になっていたチームラボの猪子寿之さんが以前、これからのモノづくりは『グローバル・ハイクオリティ・ノーコミュニティ層と、ローカル・ロークオリティ・コミュニティ層の二つに分断される』と言われていました。猪子さんの言葉を借りて言うのであれば、最初から前者を目指してきたと思っています。これらの軸をごっちゃにしてしまうと、中途半端になってしまいます。

例えば最近の日本では、コミュニティの重要さが良く語られますが、BUAISOUでは意識していません。もちろん地域のコミュニティも大切だと思っていますが、グローバルに突き抜けることで、間接的に地域へも還元ができると考えているんです」
次ページ > 最初からNYで会社を設立

文=国府田 淳

ForbesBrandVoice

人気記事