老舗繊維商社、瀬戸内に「循環」テーマにした拠点。その狙いは?

地域の循環を突き詰めると、地域らしさが出てくる

中商事が設立以来取り組んできた「つなぐ」という価値を現代の時代・社会背景に合わせて再定義し、循環を通じて地域を盛り上げ、よりよくするという新たなビジョンともに始まったAJI CIRCULAR PARK。中さんは、この場所を通じてこれからどんな未来を作っていきたいのだろうか。

中さん「昔からそうなのですが、自分で何か大きいことをしたいとか、名を残したいとかはなくて。自分で終わりではなく、次のバトンをつないでいけるような役割をできたらなと。この地域がいつまでも豊かであってほしいですし、子どもたちや次の世代まで美しい瀬戸内をつなげていってほしいなと」



「ただ一つ、こんな世の中だったら面白いなと思うのは、それぞれの地域に個性がある世界です。AJI CIRCULAR PARKには『地域内循環』という考え方があります。循環させるのであればできる限り近いほうが良いという意味なのですが、地域にはその地域ならではの資源があるので、地域での循環を突き詰めていくと、自然とその地域らしさが出てくるのかなと思います。私は旅行も好きでいろんな地域に行くのですが、やはりその地域独自の文化に触れ合うのはとても楽しいですし、日本がその集合体になっていくというのはよい未来だなと思いますね」

何かを「成す」というよりも、次世代に瀬戸内の豊かさを「つなぐ」役割を果たしたい。地域における循環を突き詰めていくことで、自然と地域の個性が生まれ、土地土地の文化や食といった個性を楽しめるようになる。中さんが描くサーキュラーエコノミーの未来はとても地に足が着いており、常にその中心に地域と子どもたちの存在がある。


「伝える」のではなく「一緒に考える」場所に

理想とする未来の実現に向けて、これからAJI CIRCULAR PARKではどんな人とどんなことに取り組んで行きたいのだろうか。最後に中さんに聞いてみた。

中さん「モノを作っている企業がサーキュラーに取り組むというのは、製造の否定まではいかないにせよ、それに近い感覚があり、私たちもジレンマを抱えながらやっています。製造業は新しいモノをつくることで収益を上げるという仕組みで動いている部分もあるので、もうモノが溢れているからこれ以上作らなくてよいとなると、従業員の生活もある中で、事業自体の在り方が問われてくるなと」

「正解もないと思いますし、会社も自分自身も本当にサーキュラーな取り組みができているかと言えば、まだまだできていない部分もあります。だからこそ、こちらが『伝える』というよりも、どのように行動すればつながり、めぐっていけるのかを一緒に考えていける場所にしたいので、何か日本中でもそうした取り組みをしている方とはぜひつながりたいですね。ご連絡をお待ちしています」

取材後記

取材を通じて一貫して感じたのは、自分自身が何か大きなことを成すというよりも、事業を通じて大切な地元を盛り上げたい、未来の子どもたちのために豊かな自然を残したい、という中さんの誠実さと純粋な想いだ。

そんな中さんが製造業のジレンマやサーキュラーエコノミーという正解のない問いと真正面に向き合いながら作り上げた「AJI CIRCULAR PARK」には、地域に根ざした循環型の経済社会システムを創造する余白と可能性に満ちている。

AJI CIRCULAR PARKを拠点に、個人や企業として何か地域循環に向けたプロジェクトやワークショップを実験してみたい方。庵治とは全く別の地域に住んでいるけれども、循環型のプロダクトやサービス、拠点運営者として悩みや課題を共有し合いながら、ローカルから始まる新しい未来を一緒に模索したい方。まずは家族や友人、一人でもふらりと遊びにきて、おいしいベーグルを食べたり、ショッピングを楽しんだりするだけでもよいだろう。

少しでも興味を持った方は、ぜひ庵治石の産地、庵治町の街並みを味わいながら、この新しい公園を訪れてみてほしい。どんな人でもきっと新たな発見や出会いがあるはずだ。

【参照サイト】
・AJI CIRCULAR PARK(アジサーキュラーパーク)
https://ajicircularpark.jp/
・中商事
https://naka.co.jp/
・環境とアートと地方創生。瀬戸内の島々で学んだ、私たちが日常で見えていなかったものーE4Gレポート
https://ideasforgood.jp/2019/11/22/shikoku-teshima-ogijima-e4g/


※この記事は、2023年1月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
(上記の記事はハーチの「IDEAS FOR GOOD」に掲載された記事を転載したものです)

文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team

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