映画

2023.01.12

藤ヶ谷太輔主演、現実から逃避し続ける日々を描く映画「そして僕は途方に暮れる」

(C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

熱心な演劇ファンではないため、「そして僕は途方に暮れる」と題名を告げられると、どうしても1984年に発表された大澤誉志幸(当時は大沢誉志幸)の、いまでも琴線を震わす名曲を思い出してしまう。カップ麺のCMソングとしても使用されていたため、そちらで認知している人も多いかもしれない。

ただ、今回の「そして僕は途方に暮れる」は、映画のタイトルである。実はこの作品は、演劇ユニット「ポツドール」を主宰する三浦大輔が、2018年に「Bunkamuraシアターコクーン」で上演するために書き下ろした同名舞台が原作となっている。なので、多少は演劇に関心のある人なら、真っ先に三浦の舞台が頭に浮かぶはずだ。

では、この印象的なタイトルは、大澤誉志幸の伝説の名曲とどんな関係にあるのか。結論から言えば、それほど深い関係はなく、どうやら三浦が舞台版の台本を執筆していた段階で、とりあえずの仮タイトルとして記していたものだったらしい。

なかなかタイトルが思い浮かばない創作段階ではよくあることなのかもしれないが、執筆が進むうちに、あまりに作品の内容とフィットしていたので、「仮」が取れて正式な作品名になったのだという。そして今回、その舞台が映画化される際にも、タイトルはそのまま受け継がれた。

現実逃避型エンタテインメント!?


映画「そして僕は途方に暮れる」は、主人公が延々と現実から逃避する物語だ。浮気を暴かれた同棲相手から逃げる。ベタな友情を語りながらも突然逆上する友人から逃げる。その他先輩や後輩、自分をこきおろす姉、故郷に戻ると母からも逃げる。とにかく主人公が逃げて逃げて逃げまくる物語なのだ。


主人公の裕一(藤ヶ谷太輔)はひたすら現実から逃げまくる(C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

いまだフリーター暮らしの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、特に人生に目的も見い出せず、モラトリアムな日々を送っていた。同棲して5年になる鈴木里美(前田敦子)が会社に出勤するのを毎日見送り、自身は他の女性との逢瀬を重ねていた。

しかし、里美にスマホの暗証番号を知られた裕一は、彼女から浮気について問い詰められ、今後のことを話し合おうと迫られる。その場しのぎの言い訳をしていた裕一だったが、突然、デイパックに荷物を詰め込み、部屋を飛び出し、自転車に乗って走り去る。
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文=稲垣伸寿

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