ビジネス

2023.01.06

廃棄漁網から、パタゴニアのダウンが生まれるまで

(左から)Bureo のStover氏、 パタゴニア のPomphrey氏、Bureo のAhern氏、豊田通商の高橋氏

海洋プラスチック問題が深刻化しているが、そのなかでも「ゴーストギア」と呼ばれる漁業系の海洋プラスチックの問題はとりわけ課題となっている。

世界の海に新たに廃棄されるプラスチックの量年間800万トンのうち、64万トンは漁業に使用される漁網や漁具が占めると推定されている。(*1)今年9月には、太平洋ゴミベルトに蓄積しているプラスチック破片の75%~86%が、海洋での漁業活動に由来するという調査結果も発表された。

漁業に使用されるプラスチック製の漁網は、寿命を迎えた後にそれを活用できる仕組みが整備されておらず、多くが海中に廃棄されてきた。それらは海洋生物の命や健康を害するなど、環境へのネガティブな影響が指摘され続けている。

近年、廃棄漁網を原材料の一部として活用し、アパレル製品や、スマートフォン・車などの部品などにリサイクルされる例が国内外で登場し、廃棄物が資源に変わる例として注目を集めている。

パタゴニアのダウンジャケット「ダウン・セーター」に使用されている素材NetPlus(R)は、廃棄漁網をリサイクルすることにより誕生した繊維である。

NetPlus(R)は、2013年創業、米国カリフォルニア州に本拠を置くBureoにより、南米の漁業コミュニティから回収した使用済み漁網を100%リサイクルして開発された。Bureoは、廃棄漁網をマテリアルリサイクルし、原材料の一部として活用したスケートボードやサングラスなどの繊維以外の製品開発からスタートし、パタゴニアや豊田通商との出会いによりケミカルリサイクル「ダウン・セーター」の開発に至った。

今回編集部では、パタゴニア製のダウンジャケットの素材開発に関わるBureo、豊田通商と、パタゴニアの3社より、次の4名にお話を伺った。

・Bureo CEO(最高経営責任者)David M. Stover氏、CTO(最高技術責任者)Kevin Ahearn氏
・パタゴニア 日本支社長 Marty Pomphrey 氏
・豊田通商 繊維事業部 高橋浩平 氏
次ページ > 業界に先駆け10年以上前から取り組む

文=和田麻美子

ForbesBrandVoice

人気記事