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2022.03.17

ニッチな趣味は熱量がすごい。登山ファンに「YAMAP」が愛される理由

あなたは山に登りますか。

「はい」と答えた方は「YAMAP」を使っている、あるいは知っているのではないだろうか。一方、山に登らない人にとってはほとんど未知の存在かもしれない。それが山のインフラアプリ「YAMAP(ヤマップ)」だ。

日本生産本部の「レジャー白書2021」によると、日本の登山人口は約460万人。これに対してYAMAPのダウンロード数は、2022年3月現在で約300万ダウンロードにのぼる。つまり、理論上では登山人口の半数以上がスマホにYAMAPを入れていることになる。

YAMAPはスマホのGPS機能を利用することで、電波の届かない山の中でも現在位置を知ることができるアプリ。登山中の遭難原因の大半を占める「道迷い」を回避することができる。また、登山者の位置情報が山岳警備隊などの遭難者の捜索・救助活動に活用されることもあり、「山のインフラ」にもなっているといえる。


YAMAPの登山地図では、現在位置が青い点で示され、歩いてきた道の軌跡も記録される

「到着時刻予測」や「ルート外れ警告」などの機能が付いた月額480円の有料会員「YAMAPプレミアム」も人気で、2022年3月時点で月間利用者数のおよそ20%に達する。一般にアプリの有料会員比率は3〜5%で成功と言われていることをふまえると、非常に高い数値となっている。

登山中にビジネスアイデアが降りてきた


「人と山をつなぐ 山の遊びを未来につなぐ」

これがアプリを運営するYAMAPの企業理念だ。代表の春山慶彦は、「現代人、特に都市に住む人々にとって、“山”をもっと身近なものにするために創業した」という。人と山をつなぎたい、と思った直接的なきっかけは2011年の東日本大震災だった。

「自然災害とそれに起因する原発事故を目の当たりにして、私たちはとんでもない時代に生きていることを実感しました」

学生時代には国内外でのボランティアをしていたため、震災後すぐに被災地に行って直接的に支援することも考えた。ただ、30歳を過ぎた自分にはもっとやるべきことがあると考えた。

「地震や原発事故の経験を事業に転換して、社会にインパクトを与えたい。悲しい出来事をプラスに変えるような生き方をしないと、次の世代の人に顔向けできない」
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文=尾田健太郎 構成=田中友梨 撮影=小田光二

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