漁網回収の取り組み、今後の可能性は
Bureo Stover氏 : 今後、この活動を拡大していくことを当社のミッションと考えています。南米から始めた取り組みですが、北米やメキシコなどでも始めていますし、回収の取り組みに興味を持っている日本の企業も出てきています。今後、エリアを拡大していく可能性もあり、リサイクル素材を使って高品質な製品を作っていくことも進めていきたいと考えています。
豊田通商 高橋氏 : パタゴニアのアウトドア製品など、機能性の高さが要求される製品に対して再生素材を提供することは、非常に技術的難易度が高いのです。一方で、そこまでの難易度を求められないアパレル製品(日常的に着られるTシャツなど)も多くあります。それらを作っているメーカーであれば、より再生素材の活用に挑戦しやすいため、弊社もより多くのお客様へ積極的に活用を呼びかけ、インパクトを増やしていきたいと考えています。
素材開発にあたって難しかった点
豊田通商 高橋氏: 市場において、パタゴニアのジャケットが他製品と比較して特別なものになるポイントを考えると、以下の点が挙げられます。
まず、実際に漁師の方が使用を終えた漁網のみから作ったリサイクルナイロンは、現在のところ他に存在していません。これを100%ポストコンシューマーリサイクルナイロンと呼んでいます。廃棄漁網から作った素材は、これまでは技術的な制約により、固い製品(帽子のツバの内部に使用する部品など)にしかリサイクルできなかったのですが、今回、ジャケットの生地という柔らかさが求められる製品に使用する素材を作ることを追求した結果、リサイクル手法のアップグレードに成功しました。
極寒地にも耐えうる高性能な製品を作るという難易度の高い製造工程において、新しい素材を生地にするという挑戦にともに協力してくれる、質の高い技術を持つパートナーの協力が得られたことが成功要因のひとつと言えます。これは日本でしかできなかったことと考えています。これまでパタゴニアが、サプライチェーンの末端にいるパートナーに対してまで、ビジネス面での成功を公正に還元できていた結果でもあります。
この製品は日本以外でも販売されています。このプロジェクトにおいては、ケミカルリサイクルによる再生材を100%活用するビジネスを通じて環境負荷を低減していくという、パタゴニアが実現したかった社会課題の解決策を提供できたということが関係者にとって非常に大きな点です。
Bureo Stover氏 : 私たちは“move people emotionally”ということを大事にしており、サプライチェーンに関係するステークホルダーに、目的を理解・共感したうえで動いてもらうことが出来ました。
パタゴニア製ダウンジャケットの外側および内側生地にNetPlus(R)を使用